TEXT: ITAKO JUNICHIRO
Twitter上の出会いから始まったズーカラデルと中村一般のコラボレーション。互いのイメージを擦り合せながら完成したアルバムのアートワークから浮かび上がってきたのは、ズーカラデルの音楽、そして中村一般のイラストに共通する、あるひとつの感覚だった。言葉ではなく、音と絵で彼らが表現しようとしているのはどんなものなのだろうか。
生活に寄り添う表現
—— ズーカラデルのみなさんは中村さんからあがってきた最終的なジャケットのイラストを見ていかがでしたか。
鷲見 自分たちは音楽を通して言いたいことや表現したいことを伝えているので、アートワークをお願いするにあたって、ちゃんと自分たちの思いが中村さんに伝えられていたか不安なところもあったんです。でも中村さんは僕らの思いをしっかりと受け止め、想像以上のものを描いてくれた。自分たちが作りたいと思った作品はまさにこれだったんだと絵を見た瞬間に思えたし、誰と戦ってるとかはないですけど、とにかく“勝った!”となぜか思いましたね(笑)。
吉田 Twitterで偶然流れてきた中村さんの絵を見て何かを感じとった自分の感性は間違ってなかったなと(笑)。
山岸 絵が届いた時はあとはマスタリングを残すのみという時期で、あとはアートワークだなという思いもあったので、これでひとつの作品としてすごいものになるぞという確信を得ました。
—— 自分たちの納得する曲を作り、それを録音してアルバムになったわけですが、そこに中村さんの絵が加わったことで『ズーカラデル』というアルバムに対する新たな発見や気づきなどはありましたか?
吉田 中村さんの絵と一緒になることで、音楽の解像度がより高くなったような気がしました。ちょっとぼんやりしていたものがくっきりしてきたというか、すごく身近なものになった感覚もあった。そもそも僕らの音楽の性質として、生活に寄り添う感じがあったとも思うんですが、その部分がさらに強まったんだと思います。
山岸 先ほど中村さんが絵を描くにあたって『光のまち』が印象的だったとおっしゃっていましたが、実はあの曲は結構昔からあるもので。そういう曲が中村さんにインスピレーションを与えることができたというのはすごく嬉しいし、『光のまち』に限らず、アルバムに収録されている楽曲たちをあらためて客観的に聴くことができたのはすごくよかったです。
鷲見 僕らは作品を作る際には曲順にもしっかりと意味を持たせたいと思っていて。繰り返し何度も聴き込んで曲順を3人で考えていき、『花瓶のうた』という朝の歌から始まり、『前夜』という夜の歌で終わる流れにしたんです。朝から始まり夜に終わるんだけど、もう一度、1曲目から続けて聴きたくなるような……終わるんだけど、何かがまだ続いていくような感覚を聴いてくれた人たちに感じてほしいという願いを込めました。そういう僕らの思いが、中村さんのアートワークを通して、きっと多くの人に伝わるんじゃないかという手応えを僕は感じました。
—— 中村さんはあらためて今回のズーカラデルのアートワークの制作を通して感じたことはありますか。
中村 お話をいただいた当初は戸惑いもあったし、フェスでズーカラデルのライブを観た時にはたくさんのお客さんが集まっていて、こんなすごい人たちを納得させられるようなものを自分が描けるんだろうかというプレッシャーもありましたけど、完成したCDを手にしてみて、自分だったらジャケ買いしそうなCDになったなと思えましたし、すごくやり切った感はあります。
—— 中村さんは現在、イラストレーターとして活躍されていますが、絵を描き始めたのはいつぐらいなんでしょうか。
中村 小学生の頃から絵の塾に通っていたので、その頃からずっと描いています。中学高校も美大の付属校だったので、絵に触れさせてもらえる機会は多かったですね。
—— ズーカラデルとの出会いもそうでしたが、“ダックスフンドを探せ”シリーズがTwitter上で話題になり、様々な仕事が舞い込んできたと思うのですが、あのシリーズを始めたきっかけは?
中村 以前から自分はすごくごちゃごちゃした絵を描いていたんですけど、それは自分の頭の中にあるものや自分の感情をそのままぶつけるように描いたものだったんです。そういう絵を描いているうちに、自分以外の人も楽しめるような、人が参加できるような絵も描いてみたいと思い始めて、ダックスフンドのシリーズを始めたんです。あんなに話題になるとはもちろん思いもしなかったですけど、でもダックスフンドシリーズのおかげでズーカラデルだけでなくいろんな人たちと繋がることができたのはありがたいことですね。
言葉にならないもの
—— ズーカラデルのメンバーも言っていましたが、中村さんの作品は日常生活を描いているものが多くあります。そこがズーカラデルの音楽との共通点でもあると思うのですが、ご自身としては描く対象やテーマについてどう考えているのでしょうか。
中村 自分はぶっとんだ発想ができるようなタイプではないんです。絵を描き始めた頃は自分で物語を考えて絵を描いてみようと思っていましたけど、なかなか上手くいかなくて。それならまずは自分の身の回りのものを描いてみようと思った。そうしたらそれが一番性に合っていたんです。日常や身の回りのものをモチーフに描くというのは、昔から変わらない部分なんだと思います。
—— あらためてズーカラデルの3人は中村さんの絵の魅力はどんなところにあると感じますか。
吉田 自分の頭の中にあるものを絵にぶつけるように描いていたとおっしゃいましたが、その感覚は僕もわかる気がします。色や線などの気持ちよさというのも中村さんの絵の魅力ではあるけれど、僕はそれ以上に中村さんの絵から立ち上がってくるエモーションやストーリーが輝いて見えるんです。僕も曲を作ろうとすると割とエモーショナルな気持ちになることが多いので、中村さんの絵を見ていると、“わかる! そうだよね!”といつも思う。その言葉にならないものを絵として再現することができるのはすごいことだと思います。
鷲見 中村さんの描く線を見ていると、人間が描いているということがひしひしと伝わってくるんですよね。中村さんの絵を見ていると、悲しいというわけじゃないんだけど、なんだか泣けてくるんですよね。そこが僕が好きなところなのかもしれない。
山岸 こんなことを言うと失礼かもしれないですけど、社交的で誰とでも上手く付き合える人だったらこういう絵は描かないんじゃないかなと感じて。中村さんの絵からはそういう人柄が滲み出ていて、それをしっかり表現として成立させている。僕はそこにすごくシンパシーを覚えます。
中村 あらためて目の前で自分の絵のことを言われると恥ずかしいですね(笑)。でもありがとうございます! ダックスフンドシリーズで注目していただけたことはすごく嬉しいことなんですが、今の自分のテーマが“ダックスフンドシリーズからの脱却”というもので、絵の中にたくさんの要素を入れなくても、キレイな線が引ければ伝わる絵になるんじゃないかと思っていて。今はそこをがんばっているんですけど。
—— ズーカラデルと中村さんは必然的に出会い、一緒にモノ作りをしたんだなということが今日のお話を聞いていて強く感じました。またぜひ両者のコラボレーションを見てみたいです。
吉田 そうですね。僕たちはとにかく良い音楽を作り続け、この作品には中村一般の力が必要だと思えた時に、ぜひまた一緒に面白いことができたらと思っています。
前編はこちら。
プロフィール
LIVE SCHEDULE
ズーカラデル「全国ツアー」追加公演 ※全公演SOLD OUT
2020年
1月25日(土)名古屋JAMMIN’
1月31日(金)渋谷CLUB QUATTRO
2月8日(土)大阪Music Club JANUS
スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2020
出演)KOTORI / Suspended 4th / ズーカラデル / ハンブレッダーズ
■公演日程
2020年
2月21日(金) 福岡 BEAT STATION
2月22日(土) 広島 CLUB QUATTRO
2月24日(月祝) 高松 MONSTER
2月27日(木) 札幌 cube garden
2月29日(土) 仙台 MACANA
3月1日(日) 新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
3月4日(水) 名古屋 CLUB QUATTRO
3月5日(木) 大阪 BIGCAT
3月7日(土) 東京 マイナビ BLITZ 赤坂
info https://www.spaceshowertv.com/retsuden/tour2020/
ズーカラデル Official Web http://gooutzoo.com/
ズーカラデル Official Twitter http://twitter.com/gooutzoo