ウイスキーは“大人のお酒”というイメージを持つ人が多いかもしれない。しかし、最近はリーズナブルな価格帯の銘柄も多数ある。今回は1,000円代で買えるウイスキーをストリート発のジャズ&ヒップホップチーム、SANABAGUN.の8人に味わってもらった
—— SANABAGUN.はメンバー8人と大所帯ですが、みんなで飲みに行くことはありますか。
澤村一平(Dr) 今ちょうどアルバム『BALLADS』のツアー中なので、地方でのライブの後にみんなで行くことはありますけど、東京にいる時はほとんどないですね。
大樋祐大(Key) でも別に仲悪いわけじゃないですから(笑)。
—— みなさん、普段からウイスキーをよく飲んでいますか?
大樋 僕はアイリッシュのジェムソンが大好きで、家でもよく飲んでいます。上京祝いにバイト先の先輩からもらって飲んだのがハマったきっかけ。
谷本大河(Sax) バーボンのちょっと香ばしい感じのものをロックでゆっくりと飲むのが好きかな。
高岩遼(Vo) 俺もバーボンですね。アメリカの音楽が好きなので、どうしてもそうなります。ウイスキーにはスコッチ、アイリッシュ、ジャパニーズなどいろんな種類があるけど、バーボンが一番好きですね。
髙橋紘一(Tp) 俺もウイスキーと言えばやっぱりバーボン。ジャズがきっかけで飲むようになったんですけど、二十歳そこそこの頃は味もわかってなくて。でも徐々に美味しさがわかるようになってきた。好きなのは黄色いラベルのアーリータイムズ。
岩間俊樹(MC) 俺がよく飲むのはジムビームのソーダ割りかな。
大林亮三(Ba) 最近は好きなラッパーが飲んでいるスコッチに興味がありますね。
隅垣元佐(Gt) 俺は酒自体週に1回飲むぐらいで、ウイスキーはハイボールで飲むことが多いです。
高岩 でも大事な時とかにロックでゆっくり飲んでるよね。
隅垣 そうだね。気付け薬みたいな感じかな。
澤村 昔、ライブ終わりに差し入れでもらったバーボンを遼がストレートでクイッて飲んでたのを思い出した。“一平も飲め!”って勧められて飲んだら、ライブ後のカラカラの喉を通って食道がカーッて熱くなってびっくりしたのを覚えてる(笑)。
—— ウイスキーというお酒に対してはどんなイメージがありますか。
髙橋 “男の酒”ってイメージかな。自分の中でビシッと決めたい時に飲むことが多いかもしれない。メンバーと居酒屋に飲みに行くならチューハイでもいいんだけど。
大林 意外と幅広いシチュエーションで飲めるお酒だと思う。飲み会ではハイボール、ライブイベントではウイスキージンジャー、みたいに。
高岩 やっぱり音楽とお酒の結びつきは強い気がする。ウイスキー=ジャズ、日本酒=演歌みたいな。そういう意味では、うちらの音楽性やスタンスは日本酒からウイスキーまでカバーしていると思う。
髙橋 ブラックミュージックに岩間のゴリゴリの日本語ラップが乗るしね。
岩間 日本酒要素なんだ?(笑)。
高岩 日本酒顔してるじゃん。SANABAGUN.には“ふんどし感”もあるから。
谷本 上はスーツのジャケット着ているけど、下はふんどし締めてるみたいな。
大林 極道感あるよね。
澤村 スーツ着てふんどし締めた極道感て訳わからんわ(笑)。
—— 今日はジャパニーズのブラックニッカ、スコッチのバランタインとデュワーズ、アイリッシュのジェムソン、そしてバーボンのアーリータイムズ、ジムビームと、4ジャンル6種類のウイスキーを味わってもらいましたが、いかがでしたか?
岩間 ブラックニッカのハイボールがすごく飲みやすかったですね。
髙橋 香りもそんなに主張し過ぎず、口当たりも柔らかかったね。
高岩 そういうところが日本的なのかもしれない。
谷本 バランタインは透き通ったお酒だなっていう印象。
髙橋 甘みがあってスムースで女性でも飲みやすそう。
大林 俺はスコッチを勉強したいからバランタインかな。
高岩 俺もスコッチは普段あまり飲まないから、これからはちゃんとスコッチを味わいたい。
大樋 やっぱり自分はジェムソンが一番好きだなと思いましたけど、今日飲んだウイスキーはどれもボトルで千円台なんですよね。
髙橋 缶ビールの六本入りを買うのと同じぐらいの価格でウイスキーが飲めるのはいいなと思う。
大樋 家に常備できるし。遼くんはグラスにもこだわりがあるって言ってましたよね。
高岩 やっぱり重みのあるロックグラスで飲みたいね。
髙橋 氷も重要。やっぱりロックはアイスピックで削った丸氷で飲みたい。
大林 昔、バーテンダーのバイトをしていた頃は丸氷を大量生産してたわ。
澤村 亮三のバーテンダー時代の話で初めてまともなエピソード聞いた気がする。ここで言えないようなことばっかりいつも聞いていたから(笑)。
岩間 俺は昔、船乗りをしていたんですけど、船乗りの先生が、北極の氷を使って飲むウイスキーのロックが最高だって言ってた。氷がウイスキーの中で溶け出すと、何億年も前に氷の中に閉じ込められた空気が気泡になって出てくるらしい。
谷本 めっちゃロマンあるね。
隅垣 普段はハイボールばかり飲んでいるので、久しぶりにいろんな銘柄をロックで飲んでみると、それぞれの味の違いがよくわかってウイスキーってお酒は面白いなとあらためて思いました。
高岩 それに今日は昼間から飲めて最高だった。この後のリハも気合い入れてこう!
SELECTION OUR DAILY WHISKY
味わい深くて香りもグッド。なのに気軽に楽しめるプライス。だからいつでも部屋に置いておく。それが彼らのデイリーウイスキー。
ブラックニッカ リッチブレンド
JAPANESE
ニッカウヰスキーの蒸溜所は余市と宮城峡。マッサンこと竹鶴政孝が建てた気候の異なる2つの蒸溜所で今も原酒をつくり、熟成をしている。その1つである宮城峡においてシェリー樽で熟成させたモルトを中心にブレンドされたのがこのリッチブレンド。
シェリー樽とは文字通りシェリー酒を貯蔵していた樽のこと。そしてシェリー酒とはスペインのアンダルシア州ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ周辺でつくられる葡萄酒のことだ。シェリー樽で熟成することで、シェリー由来の香りやコクが原酒に移り、色も濃い赤褐色に変わっていく。だから、シェリー樽で熟成したモルトウイスキーは、独特な甘い果実のような香りと鮮やかな色彩を持つのだ。
モルト原酒は大麦を原料にポットスチルという単式蒸溜器で蒸溜するが、宮城峡にはそれとは別に「カフェ式」と呼ばれる連続式蒸溜機がある。それで穀物を原料にグレーン原酒を作るのだが、これがかなりの年代物。しかし、現代の蒸溜機では出せない穀物の甘みやコクが残ったグレーンウイスキーが出来上がる。シェリー樽モルトとカフェグレーンを絶妙にブレンドすることでリッチブレンドが完成する。
その味わいは芳醇で伸びやか。大人数より1〜2人で、ゆっくり時間をかけて楽しもう。飲み方はオン・ザ・ロック。ロックグラスに氷を入れリッチブレンドを注ぐ。すぐには飲まずに少し待つ。氷が溶けてウイスキーに混ざり合ったら一口味わう。そしてまた時間を置き、さらに一口味わう。そうしてリッチブレンドの表情の変化を感じるのがお勧めだ。
バランタイン バレルスムース
SCOTCH
バランタインはスコットランドを代表するブレンデッドウイスキーとして世界中で親しまれているブランド。その特長はスコットランドのハイランド、ローランド、スペイサイド、アイラ島という4つの地方で作られたモルト原酒とグレーン原酒をバランス良くブレンドしていること。ブレンダーの匠の技により、気品ある優雅な香りと味わいを実現し、高く評価されている。そんなバランタインのニューフェイスがこのバレルスムースだ。
ウイスキーを熟成する樽は、内側を炎で焦がすことをご存知だろうか。これはチャー(charring)といって、原酒の熟成に大きな影響を与える作業である。バレルスムースはバランタインの5代目マスターブレンダーであるサンディー・ヒスロップがブレンドに使用する原酒の選定のみならず、フィニッシュに使用する、味わいの決め手であるアメリカンオーク樽の焼き方、火加減まで監修を行っている。それゆえ、黄金のような明るい琥珀色に仕上がっている。
飲んでみると、バニラやキャラメルを思わせる上品な甘さの中に、微かなスモーキーさを感じる。名前の通りスムースな口当たりで、余韻は十分に長い。
もちろん、ハイボールで飲むのもいいだろう。だが、このバレルスムースなら「トワイスアップ」という飲み方をお勧めしたい。グラスに適量のバレルスムースを注ぐ。そこにウイスキーと同量、常温のミネラルウォーターを加える。それだけで完成する。
氷を入れずに水を加えることで、より香りが立つ。そんな飲み方が似合うウイスキーだ。
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