Dr.MartensのAW2018コレクションの目玉となった、ジョイ・ディヴィジョン/ニュー・オーダーとのコラボレーションモデル。歴史に残る名盤/名アートワークをデザインに落とし込んだこのブーツを履くのは、ドレスコーズの志磨遼平とSUPER BEAVERの渋谷龍太。それぞれが考える音楽とファッションの関係性、自身のファッションのルーツ、そしてDr.Martensとの出会いを語る
PHOTOGRAPHY: GOTO TAKEHIRO
TEXT: SUGAWARA GO
◆INTERVIEW
志磨遼平(ドレスコーズ)
元々Dr.Martensのブーツは好きだったけれど、今回はニュー・オーダーとジョイ・ディヴィジョンとのコラボで、しかも僕がニュー・オーダーで一番好きなアルバム(『権力の美学』)のアートワークが採用されていると聞いて、それはいいに決まってるだろう、と。実際に履いてみたけど、このロマンチックな感じがすごくいいですよね。気に入りました。
僕にとってマーチンは、「地元の格好良い憧れの先輩」のイメージ。マーチンを履いている人たちはみんな確固たるスタイルや美学を持っていて、紐の色や結び方ひとつとってもパンクスとしてのこだわりがある。その感じがなんか格好良かったんですよね。十代の頃はそんな先輩たちを見つつ、自分なんかが履いていいのかな、と思いながらも10ホールを履いてました。
ファッションに関しては実家が洋服屋だったこともあって昔から興味がありましたけど、なんとなく格好良いからとか、今それが流行ってるからという理由で服や靴を選ぶことはあまりなくて、自分の中にそれを着る必然があるものを結果的には選んできたんだと思います。だから僕の場合は自分が作っているその時その時の音楽に相応しいスタイルに自然となっていく。あとはちょっとしたユーモアだったり、人を喰ったようなセンスのあるものが好きですね。ジョニー・ロットンやカート・コバーンのような。音楽はもちろんだけれど、ファッションも音楽とは切り離すことのできないカルチャーだし、それらが複合的になっていくのが面白いところですから。このマーチンのブーツもまさにそういうもので、もちろん気軽に履いても全然いいんだろうけど、その背後にあるカルチャーを知ることでより楽しめるものだと思います。
◆INTERVIEW
渋谷龍太(SUPER BEAVER)
Dr.Martensのブーツを履き始めたのは6、7年前かな。それからはずっとマーチンひと筋で、1年のうち360日は履いています(笑)。基本的に自分の中でボトムスはスキニーにマーチンとほぼ決まっていて、それはスキニーに一番合うのがマーチンだと思っているから。きっかけは高校生の頃に通っていたライブハウスで、割とハードコアなアンダーグラウンドのパンクシーンが好きだったんです。新宿D.O.M.とかアンチノック、下北沢のシェルター、あと西荻系とかも好きだったし。そういうところの怖い感じのお客さんやアーティストがよくマーチンを履いていました。それがまた格好良くて。僕のファッションのルーツですね。
ボトムスは基本スキニーにマーチンと言いましたが、トップスはほぼバンドTです。バッド・ブレインズとかマイナー・スレットあたりのUSハードコアが多いんですけど、それってデザインが格好良いのはもちろんだけれど、それ以上に同じバンドを好きな人たちと繋がれるのが僕にとっては大きくて。「そのバンドいいよね。好きなの?」ってところから、「俺も好き。あの曲いいよね」「だったらあのバンドも好き?」みたいにどんどん広がっていく。その感覚を大事にしたくて。
このジョイ・ディヴィジョンのモデルは、ジャケットのアートワークがプリントではなくてエンボスになっているところがポイントですね。一見普通の黒いブーツにも見えるから服にも合わせやすいし、でも実はすごく手が込んでいるという。ジョイ・ディヴィジョンを知っている人はもちろんだけれど、知らない人もここから興味を持って彼らの音楽に入っていくのも全然アリだと思います。そうやって世界が広がっていくのはすごく素敵ですよね。
Dr.Martens × JOY DIVISION
Dr.Martens × NEW ORDER
英国パンクカルチャーを象徴するブーツブランドでもあるDr.MartensのAW2018コレクションは、1970年代後半の英ポスト・パンクムーブメントにおいて圧倒的な存在感を放つバンド、ジョイ・ディヴィジョン、そしてそこから派生したダンス/ロックバンド、ニュー・オーダーの2組をフィーチャー。79年リリースのジョイ・ディヴィジョン1stアルバム『Unknown Pleasures』、83年リリースのニュー・オーダー2nd『Power, Corruption & Lies(邦題『権力の美学』)』、89年リリースの5th『Technique』の意匠がそれぞれ異なる手法でブーツのデザインに落とし込まれている。元々のアートワークを手掛けたのはジョイ・ディヴィジョン、ニュー・オーダーも所属したレーベル≪FACTORY RECORDS≫の専属デザイナーであり、後に英国を代表する商業デザイナーとなるピーター・サヴィル。70年代末~80年代にかけてのポスト・パンク/ダンスカルチャーの歴史と当時の退廃的、享楽的な空気をそのままパッケージした3モデルだ
(6月20日発売『SWITCH Vol.36 No.7 特集 WHO IS KOHH?』掲載)