変化し続ける音楽シーンという“荒野”に足を踏み入れ、新しい音楽を生み出そうとしている次世代のアーティストを紹介。第25回は新たなロックバンド像を確立しようとするNovelbright
TEXT: ITAKO JUNICHIRO
DNA MUSIC
Novelbrightの“匂い”を嗅ぎ取るための30曲
美しいメロディとポップさ。ロックバンドとしてのスタイル。新しいバンドの在り方を提示しようとするNovelbrightのエッセンスとなった楽曲たち
INTERVIEW
お茶の間で知られるバンドになりたい
2013年に大阪で結成されたロックバンド・Novelbright。オリジナルメンバーである竹中雄大(Vo)のもとに山田海斗(Gt)、沖聡次郎(Gt)、ねぎ(Dr)が2016年に、そして2019年に圭吾(Ba)が加入し、現在の体制となった。彼らの存在が広く知られるようになったのは、2019年にTikTokやTwitterなどのSNSで路上ライブの様子を発信したことがきっかけだった。雄大の圧倒的なハイトーンボイスが幅広い層に受け入れられ、各種ストリーミングサービスでは上位にチャートインし、ライブの動員も瞬く間に増加。なぜ彼らの音楽は急激に支持を集めることができたのか。海斗と圭吾に訊いた。
「僕は長い間、バンド仲間、一リスナーとしてNovelbrightを客観的に見ていましたが、2017年に会場限定のミニアルバム『Chandelier』を出した頃はまだバンドとして目指す音楽性が定まっていない印象でした」(圭吾)
「その頃はメンバー各々が自分の好きな曲を作り、それを形にしてみたという感じでしたね。強いて言うなら、ハードロックとラウドロックの間みたいな。それで僕が加入して以降、試行錯誤が始まりました。2018年の『SKYWALK』というミニアルバムでは雄大の歌の魅力を最大限に引き出すため、バンドサウンドにポップな要素を加えることで、とにかく聴きやすい音楽を目指そうということになったんです」(海斗)
雄大の歌声が秘めた力を伝えるために彼らが試みたのが、ライブハウスから飛び出し、路上ライブをすることだった。
「小さいライブハウスで演奏していると、ボーカルが楽器の音に埋もれてしまい、雄大の歌がストレートにリスナーに届いていないなと感じて。それなら路上に出てアコースティックの演奏に乗せて彼の裸の歌を不特定多数の人たちに聴いてもらおうと考えたんです」(圭吾)
先述の通り、路上ライブの様子をSNSで発信したことで急激にバンドの認知が上がったが、それは予想をはるかに超える反応だったという。
「最初は遊びのような感覚で僕がSNSに投稿し始めたんですが、どんどん拡散され、動員も増えていって。そこからは意識的にSNSを使うようになっていきました」(圭吾)
バンドの勢いが増していく中、昨年発表した『「EN.」』の楽曲にもさらなる変化が起き始めた。圭吾が主導となって鍵盤やストリングスのアレンジを豊富に取り入れ、シンガロングできるコーラスも多用するようになっていった。
「『「EN.」』はとにかく歌詞もメロディも曲の展開、アレンジもキャッチーなものにしようという意識がありました。ただ、制作していたのはバズる前だったんです。だから今制作中のアルバムのほうがバンドを取り巻く状況の変化も踏まえて、より緻密に戦略的に音楽を作れているという手応えがあります」(圭吾)
「どんな世代の人にもわかりやすく、瞬間的に聴き手の心を掴む曲を作る。そこに雄大の歌声が乗れば、それはもうNovelbrightでしかない音楽になるという自信がある」(海斗)
ライブハウスで地道に実績を積み重ねながら成功を掴むというのがバンドのスタンダードな物語だとするなら、Novelbrightの歩もうとしている物語は新しいバンドの在り方を示すものかもしれない。路上ライブやSNSの活用だけでなく、雄大はJ-POPの名曲を様々なシンガーが歌う地上波の歌番組にも出演。彼らは自分たちの音楽を広めるための努力を惜しまない。
「シーンの真ん中で長く音楽を続けていくのが目標。そのためにもお茶の間で知られるロックバンドになりたい。そんな僕らのやり方はロックじゃないと思う人もいるかもしれないけど、お茶の間にも進出しながら、フェスに出れば音楽ファンも納得するようなライブを見せつける。そういうバンドの在り方こそがロックなんじゃないかと僕らは思っています」(圭吾)
*こちらの記事は2020年3月20日発売の『SWITCH Vol.38 No.4 特集 リック・オウエンス』でもお楽しみ頂けます