7月11日から東京・天王洲のギャラリー「KOTARO NUKAGA」で、写真家・石塚元太良の個展「Gold Rush California/NZ」が開催される。
10代の頃から世界中を旅し、大判のフイルムカメラで極地のランドスケープを撮影してきた写真家・石塚元太良。その詩情的なイメージを想起される独自のスタイルは「コンセプチュアル・ドキュメンタリー」とも評される。
今回発表するテーマは、石塚の写真を多数掲載した小誌『Coyote No.66 北に遊び小屋に暮らす』でもフォーカスした〈ゴールドラッシュ〉。1848年にアメリカ・カリフォルニア州で始まった現象で、一攫千金を狙う多くの人々が金脈を追って移住した結果、アメリカ経済や人口移動、その後の社会に大きな影響を及ぼした。
自身の撮影していたパイプラインや氷河に通底する、〈ゴールドラッシュ〉という歴史的地層の存在に気づいた石塚は、2011年からアラスカ全土に点在するゴールドラッシュ時代の遺物の撮影を開始。そしてその活動の幅は、発祥の地であるアメリカのカリフォルニア州、さらにはニュージーランドへと広がりをみせている。今回はその中から2016年以降に撮影された〈ゴールドラッシュ〉シリーズの新作を展示する。
150年という時の流れの中で変わらない姿を残す雄大な山々や川。それとは対象的に、かつて栄えた街や人々の営みは、廃墟となった建物や自然の中に点在する遺物を残すのみとなっている。崩れかけた小屋、埃をかぶったテーブルに残された食器、動力を生み出すために使用された歯車。時空を超えて目の前に立ち上がる事物が内包する、過去から現在へと至る時の流れ、その背景に存在する土地に根ざした人々の細やかな営みを、石塚は8×10の大判フイルムカメラで捉える。
欲望に駆り立てられるように未開の地を拓き、土地を掘り尽くした人々の残像、その歴史の痕跡が見せる夢や情熱の儚さ、そして人間の業に、現代を生きる私たちは何を感じ取るのだろうか。
重層性と時事性をもって歴史を紐解くことで、新たな景色が開かれる感覚を写真という手段で捉えようと試みる石塚の新作。過去、未来という遥かなる時の流れ、遠く離れた地へと思いを馳せるきっかけとして、ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。
開催概要
展覧会名 | 石塚元太良「Gold Rush California/NZ」| Gentaro Ishizuka Gold Rush California/NZ |
会期 | 2020年7月11日(土)―8月29日(土) 12:00-18:00 休廊日:日・月・祝日 ※期間・時間は国や自治体の要請等により変更の可能性があります。 |
会場 | KOTARO NUKAGA 〒140-0002 東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 3F |
アーティスト
石塚元太良 Gentaro Ishizuka
1977年東京生まれ。写真家。10代の頃から世界を旅し始める。1999年にバックパッカー旅行でアフリカとアジアを縦断しながら撮影した『Worldwidewonderful』(Gallery Niepce、2001)でエプソンカラーイメージングコンテスト大賞受賞。2002 年、世界を東回り西回りで 2 周しながらデジタル画像の位相を捉えた『Worldwidewarp』(ビジュアルアーツ、2001)でヴィジュアルアーツフォトアワード、日本写真家協会新人賞を受賞。2006 年、アラスカのパイプラインを撮影したシリーズ『Pipeline Alaska』(プチグラパブリッシング、2007)の展覧会と同名写真集が出世作となる。2011年度文化庁在外芸術家派遣。『PIPELINE ICELAND/ALASKA』(講談社、2013)で 2014 年、東川写真新人賞。2016 年、 Steidl Book Award Japan でグランプリを受賞、『GOLD RUSH ALASKA』を 2021 年に刊行予定(Steidl)。