Foxfire True to nature Vol.7 小峰邦良

自然に挑むのではなく、自然と共に生き、
自然に対して真摯であること。
表現者は自然の声に耳を傾け、生きる知恵を学ぶ。
乗鞍を拠点に山のガイドを務める小峰邦良が考える
子どもたちのための真のアウトドア体験とは。

Foxfire True to nature Vol.7 小峰邦良
Photograph by Kubota Yasuyuki
小峰邦良 ガイド会社「リトルピークス」代表。登山を中心に、沢登り、ラフティング、バックカントリーなど幅広くガイディング。社団法人「信州乗鞍グリーンツーリズム」を通じて地域おこし活動も積極的に行っている。
構成=櫻井卓

 
ちょっと偉そうに聞こえるかもしれませんが、ガイド業は教育業だと思ってやっているところがあります。もともとは学校の先生になろうと思っていました。それを変えたのが17泊18日の子どもキャンプ。参加していたのは問題を抱えた子たちが多かったんですが、自然との関わりの中でみるみる成長していく。これなら先生にならなくても、野外教育のほうが自分に向いているんじゃないかと思ったんです。

だから参加者が楽しみながらも、自然の中で新たな“なにか”を発見してもらうということを常に意識しています。それがきっかけになって環境問題に意識が向いたり、日常生活にも良い変化が起きるような。そんな中で最近取り組んでいるのが「梓川・大河の一滴プロジェクト」。乗鞍の大雪渓が溶ける一滴から始めて、梓川が終わるまでの約65キロの行程を様々なアクティビティを取り入れながら辿っていくのですが、このツアーのテーマとしては“省かない”というのがあります。 最近の傾向ってなんでも省いちゃって、3分クッキングみたいなものが多いと思うんですよね。でも、それだといろんなことの繋がりも見えてこないし、感動もどんどん欠けていく。梓川という大河の一滴は山から来ているという当たり前のことも、頭で理解しているのと、自分の体を使って体感するのとでは大きく違います。子どもたちにそういう体験をしてもらうことで、地元の梓川を大切に思う気持ちが生まれます。そうした原体験こそが、自然を大切にするという行為に繋がっていくんだと思います。持続可能な開発、森林資源、温暖化の防止、省エネ。もちろんそれぞれ重要なテーマですが、いきなり大きな課題をぶつけられても困っちゃいますよね。自然で遊んだ原体験がないのに、そんな問題が実感としてあるわけがない。それより先に原体験をさせてあげるのが大切。自分がいつも遊んでいる川が綺麗なのか汚いのか、たくさんの生き物がいるのか、そうじゃないのか。そういう小さな気づきの積み重ねがないと、より大きなテーマの解決になっていかないんじゃないかなと思います。結果がでるには、時間はかかると思いますが、急がずゆっくり。

Foxfire True to nature Vol.7 小峰邦良

 
自然への向き合い方も同様の考え方で、やはり小さなことから。自然に入った後というよりは、入る前のルーティンを大事にしています。例えば、出社したらまず高度計を合わせる。普段から合わせていない人間が山で急に合わせるようにはなりません。手袋をテーブルにポンと置くこともダメ。そういう人間は簡単に雪原に手袋を置いてしまったりする。自然の中で起こる事故はすべてヒューマンエラーです。山は厳しいという言葉がありますが、僕は違うと思います。雪崩が災害になるのも人間が入っているから。でなければただの自然のサイクル。山での技術は2割、あとの8割は日常の過ごし方が大切だと考えています。

それは環境教育でも同じです。普段の生活をきちんとして、一見無駄なように思える体験をしっかりさせてあげる。自然も日常も、すべては密接に繋がっているなと常日頃感じます。

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