GO THE WILD SIDE OF MUSIC VOL.11 大橋ちっぽけ

GO THE WILD SIDE OF MUSIC――VOL.11 大橋ちっぽけ
変化し続ける音楽シーンという“荒野”に足を踏み入れ、新しい音楽を生み出そうとしている次世代のアーティストを紹介。第11回は20歳のシンガーソングライター・大橋ちっぽけ

PHOTOGRAPHY: SHINTO TAKESHI 
TEXT: ITAKO JUNICHIRO

 

DNA MUSIC
大橋ちっぽけの未来を示唆する30曲

ニコニコ動画をきっかけに様々な音楽を吸収してきた大橋ちっぽけ。彼がこれから新しい楽曲を生み出すにあたり、そのヒントになるかもしれないと考える30曲


 

INTERVIEW
目指しているのは虹色

「ネットがなかったら音楽をやろうなんて絶対思わなかった。いきなり人前に出て歌うなんて、自分には怖くてできないです」
 
 
そう言い切る大橋ちっぽけに歌うきっかけを与えたのは、小学6年の頃に好きだった同じクラスの女の子だった。
 
 
「その子にニコニコ動画の“歌ってみた”というジャンルを教えてもらったんです。素人なのにフォロワーが何万人もついている人たちもいて、しかも、クリックひとつでネットを介して動画を世界中に発信できるそのメディアに夢を感じて。それで中学1年の夏にAmazonでマイクなどの機材を揃えて自分も投稿してみたんです。初めて動画を投稿した次の日の朝、ネットを覗いてみると7、8件ぐらいのコメントが来ていて、再生数は200回ぐらいだったんですけど、本当に自分が世界に向けて何かを発信したんだ、という実感が湧いてきて……なんだか嬉しくなったんです」
 
 
その後、大橋は中学2年の時にギターを手にし、弾き語りカバーの投稿を始める。
 
 
「いろんな曲をカバーする中で、この曲のここがもうちょっとこういうメロディだったらもっと好きなんだけどな、と感じることが増えて、それなら思い切ってオリジナルを作ってみようと思ったんです。それが16歳ぐらいの時」
 
 
オリジナルを作り始めた大橋だが、彼にとって音楽は、ネットの世界で自分が楽しむためのものでしかなかった。そんな彼の転機となったのが、高校3年時に「未確認フェスティバル」というラジオ番組主催のオーディションに応募し出場したことだった。
 
 
「ずっと自己満足のために作ってきた音楽を他の誰かが認めてくれた。その時に、自分の感覚は間違っていなかったんだ、という自信がついて。それでシンガーソングライターとしてやっていこうという気持ちが固まったんです」
 
 
大橋ちっぽけは今年6月に初の全国流通盤『僕と青』を発表した。ひとりぼっちの少年の心情の機微が、素直なメロディと澄み切った歌声で丁寧に紡がれている。そして、それらの楽曲は自分自身に宛てた手紙のような歌だ。
 
 
「たしかに自分の心の中の感情を言葉にし、自分自身のために作った曲たちなんだと思います。でも、最近作っている曲は『僕と青』の楽曲とは少し変化してきているかもしれない。以前は自分の魂をすり減らして内面を描くような感覚だったんですが、今はもう少し純粋に音楽を楽しみたいという気持ちが芽生えてきた。だから歌詞も“気楽にやれよ”という感覚のものになってきているというか」
 
 
大橋はさらに言葉を続ける。
 
 
「最近、音楽をやっている自分と大学生として普通に暮らしている自分とが乖離しているなと感じるんです。アーティストとしての大橋ちっぽけには自分自身の理想やキレイな部分ばかりが集まっているような気がして……でも、普段の僕はふざけることもあるし、何の不満もなく平和に生きている。そういう自分が無理に悲しいことやシリアスなことを歌う必要があるのかな? って。やっぱり嘘は歌いたくないから」
 
 
20歳を迎え、少年から大人への階段を上っている大橋ちっぽけ。彼は今、アーティストとしても変化の季節を迎えているのかもしれない。大橋は『僕と青』という作品には“十代の青い感性”が閉じ込められていると語る。では、今現在の、そして未来の大橋ちっぽけの音楽はどんな色になるのだろうか。
 
 
「目指しているのは虹色。大橋ちっぽけっていろんな色の曲があって、でも全部良いよね、と感じてもらえる音楽を作っていきたい。ひとつのイメージに縛られたくないというか。そのために今は一色一色、いろんな色を塗り込めるように曲を作っている途中なんです」

 

GO THE WILD SIDE OF MUSIC――VOL.11 大橋ちっぽけ
大橋ちっぽけ 1998年生まれ。愛媛県松山市出身。「未確認フェスティバル2016」への応募をきっかけにシンガーソングライターとしての活動を本格化。今年6月に初の全国流通盤『僕と青』をリリースした。chippoke.themedia.jp
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