10月20日(金)から11月25日(土)にかけて、プロダクトデザイナー熊野亘の作品にフォーカスした個展「IN OUT」が、東京・西麻布のKarimoku Commons Tokyo 1階・ギャラリースペースで開催されている。
photo by Masaaki Inoue
熊野にとって2回目の個展となる本展のテーマ「IN OUT」は、interior(インテリア)の「IN」とoutdoor(アウトドア)の「OUT」から取って名付けられたものだ。国内では主に木工デザインを得意とするプロダクトデザイナーとして知られている熊野だが、本展では素材や国籍、インテリア、アウトドアなど、マテリアルとコンテクストの垣根を超えた多様なプロダクトが合計45点にわたって展開されている。椅子、キャンプ用カトラリー、風呂敷、鉈(なた)、コスメアイテム、傘立て、バックパックなどといった多岐に渡るラインナップからは、ジャンルを超えて幅広く活躍してきた近年の熊野の足跡を辿ることができるだろう。
展示什器には、熊野が幡ヶ谷のセレクトショップ「Nicetime Mountain Gallery」とともに製作した「NMG 002 Pole System」のプロトタイプが用いられている。キャンプ用のタープポールに着目し、さらに機能を発展させたモジュールシステムを構想したもので、優れた技術力を持つ遠藤製作所の協働のもと開発された。継ぎ目のコアパーツが汎用性を大きく高め、アウトドアに限らず、商品販売用の陳列什器や、家庭用のインテリアなど、様々な用途で使用することができるという。この特性を生かし、ギャラリー内の「スペースB」では、会期中shop/camp/homeと3つの展示テーマが周期的に切り替わり、それに応じてレイアウトと展示内容が変更されることになっている。
photo by Masaaki Inoue
熊野は2017年より活動拠点を長野県御代田町に移し、家具やランドスケープなど生活の基盤を支える様々なプロダクトを自ら作り、暮らしている。本展では「作る・使う・感じる」というプロセスを経て生まれた体感温度の高いデザインを存分に楽しむことができ、一部の展示品については、実際に買い求めることもできる。
テクノロジーの進歩に伴い、「所有」の時代から「共有」の時代へと移りゆくなかで、道具に対して求められる重要な要素とはなにか。利便性のみを追求するのではなく、より本質的な豊かさを感じることができるような日々の生活を実現する道具とはどのようなものか。熊野亘の世界観を味わいながら、そんなことに思いを馳せる機会となるのではないだろうか。
熊野亘
1980年生まれ。フィンランドのヘルシンキ芸術大学(現アアルト大学)大学院修了。ジャスパー・モリソンの東京スタジオでアソシエイト・デザイナーを務めたのち、2011年に自身のデザイン事務所「kumano」を設立。CAMPERから熊野がデザインしたアイテムが発売されているほか、パッケージデザインを手がけた資生堂「BAUM」が2020年度のグッドデザイン賞に選ばれるなど、家具やプロダクトのデザインを中心に国内外で幅広く活動を行っている。2021年より、武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科准教授として教鞭を執る。
Web: https://watarukumano.jp/ Instagram: @watarukumano
Nicetime Mountain Gallery
渋谷区幡ヶ谷に店舗を構えるアウトドアセレクトショップ。自然の魅力とともに、そこで体験する様々なシーンをより豊かな時間にする、多彩なアウトドアギアを提供する。洗練された機能美を有するアウトドアギアをはじめ、自然をテーマに創作活動を行うアーティストの企画展なども行う。熊野亘と共同開発した「NMG 001 Nata」は2022年度のグッドデザイン賞を受賞。
Web: nicetime-mountaingallery.jp/ Instagram: @nicetime.mountain
開催概要
熊野亘 個展「IN OUT」 | ||
会期 | 2023年10月20日(金)〜11月25日(土) 日曜定休 ただし10月22日(日)・10月29日(日)は開廊 | |
時間 | 12:00〜18:00 | |
会場 | Karimoku Commons Tokyo 東京都港区西麻布2丁目22-5 | |
入場料 | 無料 | |
問い合わせ | 03-6805-0655 | |
詳細 | https://commons.karimoku.com/news/detail/231004/ |
フォトグラファー: Masaaki Inoue, Bouillon
会場デザイン:熊野亘
協力: BAUM, CAMPER, kumano, MOHEIM, Nicetime Mountain Gallery, THE NORTH FACE
グラフィックデザイン:Sebastian Fehr
主催:カリモク家具株式会社