【PHOTOGRAPHERS & INSTAX mini 99】気鋭の写真家に訊くINSTAX mini 99の楽しみ方 〜草野庸子篇〜

“チェキ”の愛称で親しまれてきたINSTAXのアナログインスタントカメラ最上位モデルが、

この春、実に10年ぶりに刷新。INSTAX mini 99™が新登場した。
令和生まれのアナログインスタントカメラINSTAX mini 99で、写真表現の幅はいかに広がるのか。第一線で活躍する3名の気鋭写真家にINSTAX mini 99を渡し、撮影に臨んでもらった

TEXT: SWITCH

草野庸子[流れる時の中で]

日常に潜む永遠のような瞬間を特有の間合いであるがままに写し出してきた草野庸子。
彼女はINSTAX mini 99からいかなるインスピレーションを得たのか

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【Kusano Yoko “View the city lights”】

| フィルムカメラと同じ被写体に対峙する

──INSTAX mini 99で初めて写真を撮った時の印象はいかがでしたか。

「チェキを使うのは久しぶりだったのですが、撮った直後にプリントが出てきてすぐに見ることができるのは、やっぱり楽しいなと思いました。フィルムカメラは撮ってから見るまでに時間がかかるし、デジタルカメラも、撮ってすぐ確認できると言ってもそれは画面上でのことなので、モニターの光で見るのとプリントが出てきて自然光で見るのとは別の感覚です。自分の撮りたい対象に応じて柔軟なアプローチができるカメラだなと思います。写真を撮りたいと思った時にこれほどたくさんいじれると楽しいですよね」

──今回INSTAX mini 99で撮影する時に、何か意識されたことはありますか。

「初期のチェキは比較的単一な仕上がりになるイメージがあって、奥行きや微妙な光のトーンを写したいランドスケープなどには向いていないように思っていたのですが、今回は普段フィルムカメラで撮っているものからあまり被写体を変えずに撮影しました。先ほどチェキは撮ってすぐに確認できると言いましたが、とはいえ街に出て撮っている時にはいちいちプリントを確認せずどんどん撮っていって、時間が経ってから見返したりしていました。設定を微調整して再撮すると、後から見た時に自分で“微調整したな”と思ってしまう。そうすると面白くない気がするんです。仕事で決まった写真を撮る時以外は、撮ってみてダメだったらまた別のタイミングを作って撮る方が自分には合っている気がします。

 もともと私は“決定的瞬間”という言葉があまり好きではないというか、そういう写真を撮りたいとは思っていなくて。時間が前後にある中でたまたまその一瞬に私がいただけという感覚なので、流れている時の中に存在しているような写真を目指しています。シャッターを切る時も「今だ!」という瞬間より、むしろちょっと一息置いてから切る。時間を読むように2、3歩前後しながら、対象を見てからシャッターを切ることの方が多かったかもしれません」

──夜の写真では二重露光モードを主に使って撮影されていますが、二重露光の面白さはどんなところにあると感じましたか。

「ウォームトーンを使って自然光で撮ったものにフラッシュを焚いて撮ったものを重ねたり、二重露光モードとカラーエフェクトを掛け合わせて撮っています。実は今まで私は二重露光という技法自体をやっていなかったんです。それはスナップショットとは別物で、現実に見える風景とは違って夢の中の絵みたいなもので、考え方が難しいなと思っていました。作り出す絵には意味がない方がいいのか、意味を持たせた方がいいのか、という問題もある。二重露光は純粋な写真というよりは技巧を凝らしたもので、ストレートフォトではないんじゃないかなとこれまでは思っていたんです。でもやってみると結構面白かったです。あくまでもアナログだから作為的にやろうと思っても限界があって、どう出てくるのかわからない部分も大きい。写真って大体が撮った瞬間を覚えているものだと思うんですけど、二重露光で撮ったものは記憶に結びつかなくて、そういう意味で意外と軽やかな写真になるのかなと思います。絵画の中に描いてある絵ほどの距離感があって、不思議な感覚でした。INSTAX mini 99だとフィルムカメラみたいにロールの縛りもないですし、二重露光に向いているのかなと思いました。これを機に、二重露光もやっていきたいなと思っています。」


草野庸子 1993年生まれ。写真家。桑沢デザイン研究所卒。主な写真集に『EVERYTHING IS TEMPORARY(すべてが一時的なものです)』(2017)、『Across the Sea』(2018)など。主な個展に「彼方へ」(2019)、「Portrait」(2023)など

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PHOTOGRAPHY:OSHIMA TORU

INSTAX mini 99

“チェキ”の愛称で親しまれてきたINSTAXの、アナログインスタントカメラ最上位モデル。“究極のアナログカメラ”と称される理由は、細部にまでこだわったアナログなデザインと操作感、そしてさまざまな調整を可能にする機能面の充実にある。カメラ内部のLED発光でフィルムに直接照射して色を表現する「カラーエフェクトコントロール」や、周辺光量を抑え、中心部をフォーカスした写真を撮影できる「ビネットモード」、明暗を調整できる5段階の「濃淡調整」、シャッターを最長10秒まで開放できる「バルブモード」、1枚のフィルムに2つの画像を重ねる「二重露光モード」などの機能を駆使することで、アナログならではの唯一無二の1枚を撮影することができる。INSTAX mini 99と共に、新しい写真表現の旅へと繰り出してみてはいかがだろうか。
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