本屋のかお 大垣書店烏丸三条店(京都・京都)

本棚と書店員。二つの「本屋のかお」を通して、これからの街の本屋を考える——

スタッフの個性を生かしつつ、店全体をまとめる。スポーツチームの監督のような存在の店長・川合さんが率いる、京都の大垣書店烏丸三条店を訪ねた

本屋のかお 大垣書店烏丸三条店(京都・京都)
本屋のかお 大垣書店烏丸三条店(京都・京都)
本屋のかお 大垣書店烏丸三条店(京都・京都)
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TEXT & PHOTOGRAPHY TSUCHIYA MIZUKI

 
京都駅から、京都中心部を南北に通る地下鉄烏丸線に乗って約五分。烏丸御池駅で下車し地上に出ると、「古都」のイメージとは違う、ビルの立ち並ぶオフィス街が現れる。中でもひときわ都会的で大きなガラス張りのビルの一階に店を構えるのが、大垣書店烏丸三条店だ。一見、無機質な大型書店のようにも感じられるが、店内をじっくり歩けば、手書きの本の紹介や地元作家のサイン色紙など、温かみと工夫が感じられる。スポーツ好きの店長、川合さんに訊いた、京都のビジネス街で光る経営術とは。

—— 大垣書店は京都府内だけでも20店舗以上、他にも関西地方などで展開している書店ですが、その中でこの烏丸三条店はどんな位置付けの店舗ですか。

「大垣書店は1942年に開業して以来、徐々に店舗数を増やし規模が大きくなってきています。ここはその起爆剤になった店舗。2002年にここが開店したことで、京都の人たちに認知されるようになったと思います。北区の本店から始まって他の地域にも広まってはいましたが、京都市内中心エリアでは最初の店舗でした」

—— この場所に出店したきっかけは?

「この辺りに本屋が少なかったことが大きいですね。河原町方面など書店が多い地域もありますが、ここは少ないエリアで、街の需要に応えたという感じです」

—— 京都市の中で、この三条という場所はどんな地域なのでしょうか。

「ビジネス街ですね。周りに会社が多く、ビジネス書の強い店舗です。でも最近は街も変化していて、それに合わせてお店も工夫しています。働く女性が増えたからか、開店当時より女性のお客様が増えました。また、統計データで近隣に四人以上の世帯が増えたこともわかっていて、つまり家族連れが多くなった。そこで去年は女性向けの本や児童書の売り場を拡充させました」

—— 他にもこの店ならではの売り場の工夫を教えてください。

「サイン会や講演会などのイベントも頻繁に開催しているので、その時にいただいた色紙を飾ったり、サイン本も豊富です。最近だと瀬戸内寂聴さんや、直木賞作家の門井慶喜さんに来ていただきました。京都なので文化人も多く、いろんな方に来店していただけるんです。それと、スタッフ渾身の手描きPOPも是非見てほしいです」

—— 店頭で大きく売り出している、『SHOE DOG』のPOPですね。

「版元が主催する手描きPOPのコンテストに絵の得意なスタッフが応募して、優秀賞をもらいました。こういうことがあると、売り場もスタッフ全体の意識も盛り上がるので嬉しいです。店長はスポーツチームの監督みたいな立場ですから、働く人の個性を生かしながら、全体を見て店を動かしていく。京都は文化的な街だけど、ここはちょっと体育会系の店かもしれません(笑)」

<プロフィール>
川合薫(かわいかおる)

岐阜県出身。学生時代のアルバイトから書店業に携わり、大垣書店へ入社。烏丸三条店と駅ナカのサテライト店舗の店長を掛け持つ。休日の楽しみは二人の息子と野外でスポーツをすることなので、年中日焼けをしているのがトレードマーク

【今月の棚】

本屋のかお 大垣書店烏丸三条店(京都・京都)

手描きPOP優秀賞受賞を記念して大々的に展開しました。キャッチコピーの「はじめから高く、飛べたわけじゃない。」は、特別装丁版の帯文にも採用されています。お客様も立ち止まってPOPをじっくり読んでから本を手に取ってくれるので嬉しいです

【語りたい4冊】

本屋のかお 大垣書店烏丸三条店

①『世界のサッカー名将のイラスト戦術ガイド』著=西部謙司(エクスナレッジ)スポーツの中でも特にサッカーが好き。監督術は仕事の参考にもなります 

②『「言葉にできる」は武器になる。』著=梅田悟司(日本経済新聞出版社)喋るのがあまり得意ではなかったのですが、自分の思っていることを言葉にするためにはまず「考える」ことがいかに大切かを学んだ一冊  

③『とにかくうちに帰ります』著=津村記久子(新潮社)淡々としているけど「あるある」という描写や出来事がじんわり面白い短篇集です

④『SHOE DOG』著=フィル・ナイト 訳=大田黒 奉之(東洋経済新報社) 今月の棚で取り上げた、一押し本!

<店舗情報>
大垣書店烏丸三条店
京都市中京区烏丸通三条上ル御倉町85-1 KDX烏丸ビル1F
営業時間 平日・土 9:30-23:00 日・祝10:00-22:00

(本稿は9月20日発売『SWITCH Vol.36 No.10』に掲載されたものです)