東京都港区麻布台のGallery SUで9月26日(土)から、画家・平松麻の展覧会「待つ雲」が開催される。本会場での個展は2018年に開催された「境に浮かぶ雲」以来、2度目となる。
2012年より本格的に油彩画の制作を始めた平松は、当初より一貫して「自身の体内にある景色を抽出したい」 という願望をもとに描き続けてきた。他者からは空想のように見えるモチーフも、平松にとってはたしかに自らの内部に実在しており、時にそのなかを歩き、潜り、触れることのできる世界なのだ。その世界において重要な役割を果たすのが、雲、杭、境界線などの存在。特に雲は、幼少期から憧憬の対象であり、自身を仮託する存在として繰り返し描かれている。雲が常に留まることがないように、平松の描く雲もまた変化し続けている。
雲はじっと待つ
いつのまにか流れ消えても
そのうち高いところから雨をおとす
景色が濡れるから歩いた路がなくなる
杭を差し込むのは景色に入ったことを忘れないため
腹中に広がる景色に差し込んだ目印はもういくつになるだろう
「景色のための景色」が流す時間を見たいから、描く
—— 平松麻(本展に寄せて)
ここ数年は、展覧会での油彩画の発表のかたわら書籍・雑誌の挿画や執筆も手掛けるなど、幅広い活躍を見せている平松。現在は、翻訳家の柴田元幸による新訳『ガリバー旅行記』の連載(朝日新聞夕刊に毎週 金曜掲載)の挿画を担当。雑誌『MONKEY vol.21 特集 猿もうたえば』では平松の作品が表紙を飾った。それらの仕事は、自身の内側に対峙する緊迫した油彩画制作とは異なる、他者の作り出した物語や完全な空想の世界に心遊ばせながらの創作であり、両方の活動が補完し合い、良き相互作用を生み出している。
<プロフィール>
平松麻(ひらまつあさ)
1982年生まれ、東京都出身。油彩画を主として展覧会での作品発表を軸に活動する。現在、柴田元幸新訳 「ガリバー旅行記」(朝日新聞夕刊連載小説)の挿絵を担当中。村上春樹・アンデルセン文学賞受賞の講演テキスト(『MONKEY vol.11』SWITCH PUBLISHING、2017年)、穂村弘・書籍(『きっとあの人は眠っているんだよ 穂村弘の読書日記』河出書房新社、2017年)、三品輝起・書籍(『雑貨の終わり』新潮社、2020年)などの挿画も手掛ける。マッチ箱に絵を描くシリーズ「Things Once Mine かつてここにいたもの」も発表中。
展覧会 | 平松麻「待つ雲」 |
期間 | 2020年9月26日(土)-10月11日(日) 12:00-19:00 火曜休 |
会場 | Gallery SU (〒106-0041 東京都港区麻布台3-3-23 和朗フラット4号館6号室) |
問い合わせ | 問い合わせ:Gallery SU tel.03-6277-6714 fax.03-6277-6716 |
Gallery SU(ギャラリー エス・ユウ)について
東京都・港区のギャラリー、Gallery SU。画家ロベール・クートラスの作品を中心に、近現代作家の作品を扱う。昭和11年に、上田文三郎の設計で集合住宅として建てられた木造の洋館「和朗フラット4号館」の一室で、展覧会開催期間のみ開廊している。
作品集『Things Once Mine かつてここにいたもの』
マッチ箱の作品をまとめた作品集ZINE『Things Once Mine かつてここにいたもの』が発売中。会期中は会場でも販売される。詳細はこちら。