FROM EDITORS「最後の映画」
最愛の人を病気で亡くす、その方が両親のうちどちらかだとしたら、子どもとしてどのように最後の時間を過ごしていくのだろうか。父の好きな指揮者のレコードを一緒に聴くか、母が影響を受けた本の読み聞かせを行うか。僕自身は両親の死に...
最愛の人を病気で亡くす、その方が両親のうちどちらかだとしたら、子どもとしてどのように最後の時間を過ごしていくのだろうか。父の好きな指揮者のレコードを一緒に聴くか、母が影響を受けた本の読み聞かせを行うか。僕自身は両親の死に...
画家の岸田ますみさんの展覧会「水平線から」に出かけた。岸田さんは2014年に他界されたイラストレーター安西水丸さんの夫人だ。1941年生まれの岸田さんと1942年生まれの安西さんは、ニューヨークのThe Art Stud...
明日誕生日を迎える友人にどんなふうに過ごすかと訪ねた。自分の好きな映画を家族で観ると彼女は答えた。働く彼女は母であり、子供は三人、みな成人したが、それぞれの誕生日には家族が集まって誕生日の人のリクエストの映画を観るという...
1981年8月、僕は「ISSUE」という雑誌を発行した。B5変形で創刊号の表紙はジャコメッティの「歩く人」をモチーフにした大竹伸朗のペン画だった。アートディレクターは戸田ツトム。1964年の東京オリンピックの時はプレスセ...
コロナ禍の東京に地方から友人が訪ねてきた。知り合いが近くで飲食店を開店したのでそのオープングを祝いにやってきたと言う。おめでとうとは口に出したが、パンデミックな中でたいへんな船出だと、心意気を友人とともに祝った。 翌日、...
5月の下旬、瀬戸内寂聴さんに久しぶりに電話をかけた。電話の時間は午前11時半、瀬戸内さんのマネージャーからあらかじめ指定された。 「久しぶりですね。元気でしたか? 待っていましたよ」瀬戸内さんの第一声は弾んだ様子だった。...
5月6日、「山のアルプ美術館」の館長山崎猛さんの訃報を知った夜、2017年の夏山崎さんの元を訪ねた時のことを思い出した。『山のパンセ』で知られる哲学者串田孫一の遺品を丹念に整理して、山崎さんは個人で美術館を運営していた。...
松本隆さんの取材を行ったのが4月6日だった。その日、神戸は晴れていて、青い空に風が桜の花びらを美しく輝かせていた。翌日、松本隆さんのインスタグラムにはこう記されていた。「雑誌switchの取材。新井さんと初めて会ったのは...