2021年7月15日、画業50周年を迎えた2020年に81歳で逝去した漫画家・矢口高雄の代表作『釣りキチ三平』を手がかりに、釣りの魅力を探求した『Coyote No.74 The Sound of Fishing 川を渡る風、海の音を聴く』が発売となります。
今号の見どころ
釣りキチ三平が伝えてきたもの
かつて、釣りは食べるために魚を獲るという行為だったが徐々に趣味性が強くなり、釣りそのものを楽しむ時代へと変わった。矢口高雄は釣りの時間を“いきぬき”と称している。張り詰めた毎日を過ごしてばかりで息がつまったらヒョイと竿をかついて出かけてみるといい。そよ風に吹かれるもよし。矢口の精神は誰にも縛られることのない自分だけの世界を味わうことにある。細い糸1本で魚と、自然と語り合えばいい。自由であることの大切さ、『釣りキチ三平』はいつの時代も変わらず、釣り人の背中をそっと押してくれる。
ボクの学校は山と川 Coyote 特別篇「矢口高雄 最後の授業」
ふるさとへの強い思いと原体験を持っている矢口はかつて母校の小学生たちに授業をしたことがある。その時子どもたちに向けて語った言葉と幼少期のエッセイを再編集し、矢口高雄の最後の授業をここに開講する。
宮沢和史インタビュー
美しさを考える 矢口高雄先生の教え
子供の頃から釣り好きで、『釣りキチ三平』を始めとする厳しくも偉大な自然と、そこに暮らす人間の強さを描いた矢口マンガに多大な影響を受けてきたという音楽家の宮沢和史。生前にも親交があり、矢口高雄を先生のように慕う宮沢が矢口マンガが伝えてきたメッセージをひとつひとつ紐解く。
渓流への誘い
渓流釣りは、自然の中に分け入るための最良の手段でもあり自然が内包する脆さを身を持って知る行為でもある。人が自然と上手に付き合っていくためにはどうしたらいいだろうか。その答えを求めて、野生に生きる魚たちに会う旅に出た。
釣りへの情懐 瀬畑雄三+服部文祥
源流遡行の第一人者として知られるテンカラ釣りの名手、瀬畑雄三。各地の源流に分け入り、数々の人跡未踏の渓を拓いてきた瀬畑を沢旅の師と崇め、源流釣りを学んできたサバイバル登山家の服部文祥が訊く、渓の翁最後の教え。
オオスケ譚 サケ 綿々とその命を繋ぐ
サケは川で生まれ、海へと降り、北太平洋を回遊して大きくなる。そしておよそ4年後、産卵期を迎えると生まれた川に戻ってくる。北海道はもちろん、東北地方から日本海側の広い範囲で太古の昔からサケは遡上してきた。どうして生まれた川がサケにわかるのか、今も解明されていない。その地域の人々はサケを生活の糧にして生きてきた。自然からの贈り物であるサケの生態をオオスケ譚は物語として伝えていった。
渓流釣りの雑学
渓流釣りをもっと豊かに楽しむための川と魚と人の関係を探る、よもやま話。知れば知るほど気になってくる、そんな5編。
カジキ一本釣り漁の世界
東西に楕円形の形をした日本最西端に位置する与那国島。この島で代々行われてきたのがカジキ漁だ。カジキは南海に生息する大型肉食魚で、水中では時速百キロのスピードを誇り、時にその体長は4メートルを超えることもあるという。与那国島のカジキ漁師・上原正且の漁に密着した。
CONTENTS
Cover & Content illustrations by Yaguchi Takao
12
特集
The Sound of Fishing
川を渡る 、海の音を聴く
8
essay
池澤夏樹
狩猟民の心
17
Special Issue
矢口高雄に学べ
ボクの学校は山と川 Coyote 特別篇
矢口高雄 最後の授業
34
interview
宮沢和史
美しさを考える
写真=谷口京 文=奥田祐也
42
RIVER WALK
渓流への誘い
44
essay
佐藤成史
イワナを巡る旅
52
essay
知来要
イトウの森で想う
58
dialogue
瀬畑雄三+服部文祥
釣りへの情懐
62
document
ヤマメ、北上川の渓流を降る
写真=二神慎之介 文=若林輝
72
story
オオスケ譚
サケ 綿々とその命を繋ぐ
文=成瀬洋平
78
document
釣り人の夢
写真=猪俣慎吾 文 =若林輝
94
column
渓流釣りの雑学
100
document
孤島
上原正且
カジキ一本釣り漁の世界
写真=垂見健吾 遠藤政文 文= 新井敏記
110
壱岐、豊饒の島に生きる
写真=谷口京
3
for Readers
86
Foxfire
True to nature
Vol.8 田代法之
90
水産庁
未来へ釣り場を残すために]
92
パタゴニア
川へ分け入るための第一歩
98
モンベル
日本の渓を知り尽くした
フィッシングギア
122
document
楽園
写真=垂見健吾 文=新井菜津
128
森へ 第3回
青木奈緖
写真=堀内成郎
138
最初の一歩 第74 回
松岡和子
絵=浅間明日美
142
谷川俊太 詩
ハダカだから
絵=下田昌克
特集 川を渡る風、海の音を聴く
1,320円(税込)