カナダ最大の都市トロントや五大湖を有する広大なオンタリオ州。
循環する水の風景を求めて、高砂淳二は美しい水に彩られた大地を旅した。
初めてオンタリオ州を訪ねたのは2019年、地球上のあらゆる水を捉えた写真集『PLANET OF WATER』の制作に取り組んでいた時でした。この写真集に世界三大瀑布は外せないと思い、ナイアガラの滝に行きました。噂には聞いていましたが、他の二つの瀑布と比べてもその水量には圧倒されたましたね。ここは水が中心にある世界だと。水の色は石灰質の土壌を削りながら流れるので少し白濁していて、朝日が射し込むと色が混ざり合ってみるみる変化していく。それに水辺というのは空が開けているので、虹が架かったり鳥が飛んだり、ダイナミックな変化を楽しめるのも醍醐味です。
二回目に訪ねた時は“水の循環”がテーマでした。カナダは世界トップクラスの再生可能エネルギー先進国で、その筆頭がオンタリオ州。水力が国の発電量の6割を占めているのですが、その1割近くをナイアガラの滝の水が賄う、世界最大級の電力源なんです。発電所の中に入って水を制御している様子を見学することもできます。水量の7割以上を発電に回していると聞き、景観が損なわれるのではないかと思ったのですが、むしろナイアガラ川の水量をコントロールすることで滝のふちが侵食されるスピードを抑えているそうです。かつては毎年1メートルずつ滝が後退していたというから、水の力には驚かされます。
ナイアガラの水が注がれるオンタリオ湖のほとりには大都市トロントがあります。ビル街をバックに多くの人が湖でカヤックやSUP、釣りといったレジャーに興じていて、僕は自転車を借りて湖畔のサイクリングロードを走ったのですが、次々と変わる景色が心地よかったですね。オンタリオ湖の北東にあるキングストンはかつて3年間だけカナダの首都だったこともある古都なのですが、その近くの島には冬になるとシロフクロウがやってくるんです。ガイドの案内で幸運にも撮影できたのですが、珍しい生き物が街からこんなに近くに棲んでいるなんて、人間だけでなく生き物にとっても暮らしやすい環境である証拠。カナダの人は自然との付き合い方が本当に上手だと、今回旅をして思いました。
Tourist information
オンタリオ州は 5 カ所以上のワイン産地を有するほどワイン作りが盛ん。 なかでもナイアガラ周辺はアイスワインの生産地として知られ、全世界の 生産量の 90%以上がここオンタリオ州産。寒冷地で育てられるアイスワ イン用のブドウは、-10°Cの日が 3 日間続かないと収穫できない。ナイア ガラ周辺では 90 軒以上あるワイナリーを巡ることができ、なかには最高 級の旬の食材を調理しワインとのペアリングを愉しめるワイナリーもある。
more info ☞www.destinationontario.com/ja-jp/things-to-do/food-drink/wineries
本稿を収録した「Coyote No.79 特集 高砂淳二 THE WATER IS WIDE」はこちら。