家飲みのお供に欠かせないのが音楽。お気に入りのCDやレコードなどの音源を聴きながら飲むとお酒の味が一層深まる。そこで今回は、その選曲センスに絶対的信頼感のあるピーター・バラカンに登場願い、彼の家飲みスタイルとともに、お酒にまつわる楽曲をチョイスしてもらった
TEXT: HIGASHIYA MASAYOSHI
INTERVIEW ピーター・バラカン
クエルボ・ゴールドと中年の悲哀
家飲み歴は長いですよ。30年以上になりますかね。元々は女房と一緒に飲んでいたのですが、彼女が子育てのため外に出られなくなって、その頃からずっと家飲み中心です。我が家ではお酒だけ飲むということはなくて、食事と一緒の晩酌です。今は、外に飲みに行くのは年に1~2回ぐらいですね。
飲むのはワインか日本酒の純米酒です。僕が日本に来たのは1970年代の半ばだったんですが、当時は純米酒というのはなくて、地酒というのもほとんど流通していませんでした。でも、友達が地方出張の度に買って来てくれて、大好きな銘柄ができました。今では練馬の酒屋さんが二合瓶を毎月5種類、定額で送ってくれるんですよ。色々な日本酒が飲めて、ありがたいですね。いわば、日本酒のサブスクリプション。家飲み派には嬉しいサーヴィスです。
家飲みにちなんで、歌詞にお酒が登場する曲を選んでみました。最初はスティック・マギーの「ドリンキング・ワイン・スポー・ディ・オー・ディ」。この曲はかなり古くて、1940年代ですね。元々、戦時中に兵士たちが歌っていた歌で、その時は歌詞の「スポー・ディ・オー・ディ」の部分が卑猥な言葉だったらしく、それを酒を飲みながら兵士たちが歌っていたそうです。そんな歌の歌詞をまともなものに変えてリリースしたら大ヒットした。
「ワイン」と言ってますが、歌詞にも出てくる通り、エルダーベリーやブラックベリーを使った、要するに密造酒のことです。いわば「どぶろくソング」ですね。
次は、ジョージィ・フェイム&ザ・ブルー・フレイムズの「ギミ・ザット・ワイン」。これは、ほとんどアル中に近い男の歌です。何をやっていてもとにかくお酒がないと気が済まない男。非常にユーモラスで、ちょっと皮肉っぽい歌詞なんだけど、要するに「酒ちょうだい」という歌で、これも「ワイン」と言っているけど、特にブラックイングリッシュでは、葡萄酒に限らず酒類全体を「ワイン」と呼ぶことがありました。
次に選んだのはエリック・クラプトンの「ボトル・オヴ・レッドワイン」。これは、「自分の彼女に赤ワインを1本あげよう」という歌なんですが、この曲で思い出すのは学生時代、ヴァレンタインの時に好きな女の子に赤ワインを1本あげたこと。この歌を聴いて、それを思いついたのかもしれません。エリック・クラプトンの最初のソロ・アルバムの中で好きな曲でした。
次はスタイナー・ラクネスの「テア・マイ・スティルハウス・ダウン」。スティルハウスというのは蒸溜酒、この場合は密造酒を造る小屋のことで、主人公の男はそこで作った酒を毎日飲んでいたんだろうね。その人が歳を取って今際の際に、こう言う。「俺が死んだら、俺の人生をダメにしてしまったこのスティルハウスを壊してくれ」と。
最後はスティーリー・ダンの「ヘイ・ナインティーン」。この曲は歌詞が面白い。これが入っているアルバムが出たのは1980年。ドナルド・フェイゲンは48年生まれだから、当時は32歳です。そんな年齢の男が19歳の女の子を口説こうとしている。しかし、男とその子とは何も共通点がない。彼女はアリーサ・フランクリンのことも知らない。結果、「クエルボ・ゴールドと“ファイン・コロンビアン”があって、今夜は素敵な一晩になるだろう」っていうフレーズが出てくるんですが、クエルボ・ゴールドは普通より高級なテキーラでファイン・コロンビアンは白い粉のこと。そういうもので無理やり若い子との接点を作る。中年の悲哀が込められています。
スティーリー・ダンの音楽はお酒に合いますね。ワインでもいいしカクテルでもいいでしょう。でも、日本酒ではないかもしれない。もっとも僕は無理矢理、自分の好きなお酒と好きな音楽を何でも合わせちゃいますけど。
ピーター・バラカン 1951年ロンドン生まれ。ブロードキャスター。ラジオ番組を中心にコンピレーションCDの企画や、最近は音楽映画祭の監修役も務めている
REPLAY THE MUSIC
セレクトされた楽曲に登場するお酒を使ったカクテルの作り方をプロのバーテンダーが指南。家で作る際の裏技も教えてもらったので、是非、実際に自宅でトライしてみてほしい
Steely Dan “Hey Nineteen”
with マルガリータ
テキーラベースのカクテルといえば、これ
テキーラというとパーティピープルがショットで呷るイメージがありますが、今はずいぶん変わってきていて、ウイスキーのようにきちんと味わって飲もうという流れになってきています。
マルガリータはテキーラベースを代表するショートカクテルで、逆に言えばそれ以外ないぐらい有名。歴史も古く、70~80年前に作られたとされています。一般的には「ブランコ」という透明なテキーラを使うのですが、今回はスティーリー・ダンに敬意を表してクエルボ・ゴールドのエスペシャルで作ります。
材料としてはテキーラとライムジュース、そしてコアントローなどのホワイトキュラソーを使いますが、ご自宅だとホワイトキュラソーがない場合があるので、代わりにガムシロップなどで少し甘みを加えるのもいいと思います。また、本来はシェークするのですが、シェーカーがなければ、これらの材料を大きめのロックグラスに入れて、氷もたくさん入れて、よくかき回しただけでも美味しくいただけると思います。
グラスの塩は、あまり付け過ぎない方がいいです。あまりしょっぱいとお酒の味がわからなくなるので。裏技ですが、もしアルコールが強いと感じたら、グレープフルーツジュースを少し入れると美味しくなりますよ。
WE ARE IENOMIES
家飲みがすっかり定着した今、“外”で飲んでいた頃に比べ大きく変わったのが、お酒の価格。外飲みの場合と比較すると、リーズナブルにお酒を楽しむことが可能だ。それならば今までよりワンランク上のお酒を飲もうではないか
平凡な日常を潤す、ちょっとしたご褒美
暖房をしっかり効かせた部屋でソファに座ってほっと一息つく時間は、冬ならではの贅沢なひと時だ。そんな時間のお供にぴったりなのが、香り高く、余韻が長く続く甘みが特徴の赤霧島。気品を感じるその味わいは、いつものリラックスタイムをちょっとしたご褒美時間に変えてくれる。
赤霧島は紫芋「紫優」を原料として使用。紫優に豊富に含まれるアントシアニンが麹から生成されるクエン酸に反応して、もろみが真っ赤になることから「赤霧島」と名付けられた。すっきりとした甘みは幅広い料理と相性が良いが、チーズや生ハムなどの洋風なもの、意外にもバニラアイスやチョコレートのようなスイーツとの相性も抜群。赤霧島の若き女性ブレンダーがいち推ししているのがバニラアイスに赤霧島をかけたアフォガード。こっくりとした味わいのバニラアイスに赤霧島が不思議にマッチする。ほのかな甘みを感じつつさっぱり食べられるので、クセになること請け合いだ。
他にもこれからの季節におすすめなのが、赤霧島のお湯割りに高カカオチョコレートを溶かしたホットドリンク。カカオのポリフェノールと糖質ゼロ※1、プリン体ゼロ※2の本格焼酎の組み合わせは、健康や体型を気にする大人女子の家飲みにもぴったり。食中酒としてはロックや水割りで、リラックスタイムにスイーツと合わせて万能で楽しめる赤霧島はストック必至の1本といえる。
※1 食品表示基準による ※2 100mlあたりプリン体0.5mg未満を「プリン体ゼロ」と表示
ハイボールのオルタナティブ・フロム・USA
アメリカ・ニューオリンズで1874年に誕生したフルーツとウイスキーのフレーバーリキュール「サザン カンフォート」。バーテンダーをしていたマーチン・ウィルクス・ヘロンが、当時品質が安定してなかったウイスキーに桃やオレンジなどのさまざまな果物と秘伝のスパイスを漬け込んで売り出したところ評判を呼び、その複雑な味わいと飲みやすさで大人気に。1900年にはパリの世界博覧会で金賞を受賞して一躍世界で認められるリキュールとなり、発売から140年以上“SOCO(ソコ)”の愛称で親しまれている。
その「サザン カンフォート」に昨年4月、新しく加わったのが「サザン カンフォート ブラック」だ。SOCOの飲みやすさ、スパイシーさはそのままに、ウイスキーの力強さがプラスされ、甘さ控えめでしっかりした味わいが特徴。自宅で楽しむならロックやソーダ割りがおすすめ。特にソーダ割りは食中酒に最適だ。大き目のトールグラスに氷をたっぷりと入れ、サザン カンフォート ブラックとソーダを1:4の割合で注ぐ。ハイボール同様、唐揚げなどの揚げ物やチーズたっぷりのピザとの相性はもちろんのこと、スープカレーなどのスパイスを効かせた料理やシナモンたっぷりのスイーツなどと合わせるのも面白い。黒コショウを振ったり、レモンやライムを絞ったりと、自分なりのアレンジで飽きずに手軽に飲めるのも家飲みには嬉しいポイントだ。
ゆったりと楽しみたいプレミアムダークラム
ラムといえば、夏によく飲まれるカクテル、モヒートのベースになる透明なホワイトラムがポピュラーだが、秋から冬になり気温が下がってくると飲みたくなるのがじっくり熟成された琥珀色のダークラム。そんなダークラムの代表格がこのディプロマティコだ。
ベネズエラのアンデス山脈の麓で生み出されるディプロマティコのラムは、原料となるサトウキビも同じ地域の厳選された畑で生産されたものを使用し、「コラムスチル」「バッチケトル」「ポットスチル」という異なる3種類の蒸溜器を使ってつくられる味わいの異なるスピリッツを樽で熟成されブレンドされる。手間のかかる工程を惜しみなく行うことで、最高品質のラムをつくっているのだ。
ラベルに描かれている人物はドン フアン メレンデス。この土地の貴族であった彼は、ラムやその他の伝統的な飲料の品質向上のため、原材料や技術の研究に情熱を注いだ。ディプロマティコは、彼の感性と信念にインスピレーションを受け、ラベルに描くことで感謝と敬意の念を表現している。
「ディプロマティコ レセルバエスクルーシバ」は、最長12年熟成のラムをマスターブレンダーが絶妙にブレンド。オレンジピールやトフィーなどの風味と、うっとりするほど長い余韻が魅力。ビター感のあるチョコレート菓子やオレンジピールなどと合わせ、ロックやストレートで楽しみたい。