FROM EDITORS「あんこの季節」

茨城県の筑波山麓の親戚の農家では十五夜になるとおはぎを作る。

「大麦あたれ、小麦あたれ、三角はってそばあたれ」

子どもたちは棒状にした藁で地面を叩きながら、歌い、近所の家々を回る。歌は秋の豊作を祝うものだ。地面を叩くことによって農作物に害を与えるもぐらや害虫を追い出す虫追いの行事だと言われている。

十五夜の日、農家はおはぎを作ってご近所に配る。

五穀豊穣の祝いになぜおはぎを配るのかと農家の親戚に訊くと、おはぎには、昔の言い伝えで「魔除け」の効果があるという。小豆の色、赤い色は邪気を払う力があると言われていることが由来している。おはぎという言葉は「萩」の花から取られたともいわれる。

この地域のおはぎは、もち米をあんでくるむ俵型ものではない。もち米2とうるち米1を配合した米を蒸して皿に乗せ、ただその上にあんを乗せる。

こしあんは家に代々伝わる味。

よく洗った小豆を一晩水につけておく。次の日、つけた水を捨て小豆を水で洗う。鍋に移し、小豆の量の五倍はどの水を入れ、最初は強火で、沸騰したら弱火にして丁寧にアクを取る。小豆の芯が柔らかくなるまで煮る。この時、重曹をひとつまみほど入れると小豆はより早く柔らかくなる。次に柔らかく煮た小豆をお湯を切った鍋の中でスリコキで潰す。大きなザルにあけ、ボウルを受けにしてこしていく。さらに目の細かいザルを用意して裏ごしをする。ザルには小豆の皮や目を通らなかった繊維質が残っていく。ボウルに残ったあんを木綿のあんこし袋に入れて絞り水気を出す。そのあんが「生あん」となる。次に水と砂糖を加えてあんこを作る。火の加減に注意して、程よい固さになるまでグツグツとかき混ぜていく。こしたあんをしゃもじでかき混ぜながら水気を飛ばし甘さとコクを出す。

おはぎの生あんは小豆本来の味だという。あんはまさに手際と根気だ。

スイッチ編集長 新井敏記