変化し続ける音楽シーンという“荒野”に足を踏み入れ、新しい音楽を生み出そうとしている次世代のアーティストを紹介。第19回はピュアな衝動のままに音楽と戯れる16歳、SASUKE。
PHOTOGRAPHY: SHINTO TAKESHI
TEXT: ITAKO JUNICHIRO
DNA MUSIC
SASUKEを“音楽人”に成長させた30曲
2歳の頃から音楽に合わせて踊り始めたというSASUKE。ファンクやクラブ系のダンスミュージックを中心に、彼を根っからの“音楽人”へと成長させた30曲
INTERVIEW
僕は“音楽人”なんだと思う
5歳でダンスと作曲を開始。10歳でニューヨークのアポロシアターのステージに立ち、14歳の時に原宿で行ったドラムパッドを駆使した路上パフォーマンスがメディアに取り上げられ、“新しい地図joinミュージック”に楽曲提供。16歳になったばかりのSASUKEのこれまでの軌跡はとても濃く、めまぐるしいものだった。そんな彼の隣には生まれた時から音楽があった。
「2歳ぐらいの頃から親が家で流していた音楽に合わせて踊っていたみたいです。5歳からダンスを本格的に習い始めて、ちょうど同じ時期にお父さんのパソコンにGarageBandという作曲アプリを見つけて、ネットで使い方を調べて曲作りを始めた。そこから他の音楽制作ソフトにも手を出して、ひたすら曲作りに没頭して今に至るという感じです」
聴いてきた音楽もまさに雑食だったという。
「ダンスをやっていたので、ファンクやクラブ系の音楽は好きでしたけど、影響を受けた作品やアーティストは特にないし、音楽の歴史やジャンルを紐解くということもしない。僕はただ面白い音楽が聴ければそれでよかったんです」
そうしたスタンスは彼が作る音楽にも通じる。SoundCloudにアップされている彼が幼い頃から作り溜めてきた楽曲はジャンルも音楽性もバラバラで、それらを聴いていると、本当にただただ音楽で遊んでいるだけのように感じる。
「誰かの真似をしたことはないし、誰も聴いたことのないオリジナルな音楽をゲーム感覚で作ってきたんです」
今春、中学を卒業したSASUKEは現在、通信制の高校に通っている。通信制を選んだ理由も彼らしい。
「学校って1日の半分ぐらいの時間を占めるから曲が浮かんでもすぐに作れないし、携帯も禁止だから音のアイデアをメモすることすらできない。だからいつでも好きな時に音楽を作れるように通信制を選びました」
地元愛媛と東京を行き来しながら音楽を作り続ける毎日を過ごしているSASUKEが今年発表したのが「平成終わるってよ」「新元号覚え歌」という2曲だ。どちらも平成から令和へと時代が移り変わるという世の中のトピックを取り上げた楽曲で、遊び心満載なトラックに、過ぎ行く平成、そしてやってきた令和という時代への思いを託したリリックを流暢なラップで乗せたポップソングだ。
「これまでは自分が満足できる音楽を目指していたけど、これからはいろんな人たちが喜んでくれるようなものを作っていきたいと考えていて。この2曲はテーマもそうですが、トラックのクオリティも上がり、音楽としてこれまで以上に開けたものになったと思います」
SASUKEは続ける。
「今はいろんな技術が進化して、まるで夢のようなことが実現できる時代になっているけど……どこか暗く、鬱っぽい雰囲気に覆われているような気もします。それは世界中の音楽を聴いたり、SNSなどに書かれていることを見ても感じることで。僕はまだ16年しか生きてないですけど、これまでネガティブになったことは一切ないし、楽しみながら生きている。だから僕は暗い曲は絶対に書きたくないし、楽しい曲だけを世の中に投げかけて、そこからみんなに何かを感じてもらえたらと思っています」
最後に彼に訊きたいことがあった。ダンサー、トラックメーカー、DJ、シンガー兼ラッパーなど、現在の彼を形容する言葉はたくさんある。では彼自身は“SASUKE”とは一体何者であると考えているのだろうか。
「僕がやっていることはすべてが“音楽”に結びついている。だから“音楽人”なんだと思う。これからも好きな音楽を好きなだけやっていくだけです」
*こちらの記事は2019年6月20日発売の『SWITCH Vol.37 No.7 特集 30th ANNIVERSARY THE YELLOW MONKEY』でもお楽しみ頂けます