TEXT: ITAKO JUNICHIRO
今年7月にファーストアルバム『ズーカラデル』をリリースした札幌発のスリーピースバンド・ズーカラデル。何度も聴きたくなるグッドメロディと日常の景色と感情を切り取った歌詞が若いリスナーから支持され、大きな注目を集めている。そんな彼らのアルバムジャケットのアートワークを手掛けたのが、Twitter上で展開した“ダックスフンドを探せ”シリーズで話題になったイラストレーター・中村一般。両者は互いの表現のどんなところに惹かれ、コラボレーションが実現することになったのか。その核心に迫る対談。
出会いはTwitter
—— 今年の7月にリリースしたファーストアルバム『ズーカラデル』の制作にあたってバンドとしてはどのようなことを考えていましたか。
吉田崇展(Vo&Gt) 僕たちは札幌で結成し活動をしてきたんですが、今年の春に引っ越ししたんです。なのでこのアルバムには北海道で生活してきた中で生まれた曲であったり、北海道で活動してきた成果のようなものをちゃんと一枚にまとめるという気持ちで作ろうという考えがありました。リリースから時間も経ちましたけど、現時点での僕らのベストアルバムのような作品であり、僕らの“人生”が詰め込まれた1枚になっているように感じます。
—— ズーカラデルの魅力はなんといっても吉田くんが生み出すグッドメロディと歌詞だと思います。
山岸りょう(Dr) このバンドは吉田が弾き語りで作っていた曲のメロディや歌詞に引き寄せられるように僕と鷲見が加わりスタートしてバンドだという言い方ができるので、バンドとしてはメロディと歌詞の良さを最大限に引き出すということが大事になってくる。そこからスリーピースというシンプルな編成だけども、どんな音楽的な工夫を施すことができるかということになってくる。
鷲見こうた(Ba) 音を重ねて派手にすればいいわけでもなく、大きな音で録音すればいいわけでもない。このメロディ、この歌詞をしっかり聴かせるためにはどうしたらいいのかということを今作ではすごく考えました。そういう意味では、フルアルバムの前に出したミニアルバムよりもレコーディングにおいてはアレンジや音に関して引き算をしていくという意識があったかもしれない。
—— ソングライターである吉田くんは自身が作る歌詞やメロディについてはどう捉えていますか?
吉田 自分が作ってきた曲を振り返ってみると、結局いつも同じことばかりを歌っているような気がします。今回のアルバムに入っている曲は特にそうなんですが、その時々の音楽的な興味を楽曲に落とし込むようなことはあまりなくて、常に自分の生理に基づいた曲を作り続けている感覚なんです。だからとてもパーソナルな曲が生まれてくるし、だからこそさっきも話したように“人生”っぽい作品になったんじゃないかなと。
—— ファーストアルバムで、なおかつセルフタイトルを冠した『ズーカラデル』という本作はバンドにとってとても大切なものだったと思います。そのアルバムのアートワークを中村一般さんに託したわけですが、そもそも両者はどのように出会ったのでしょうか。
吉田 今年の3月ぐらいにアートワークをどうしようかなと考えていて、ちょうどその時にTwitterで中村さんが発表していた“ダックスフンドを探せ”というイラストシリーズの絵がタイムラインに流れてきたんです。最初は何の気なしに良い絵だなと思いながら眺めていたんですが、ある日、東京タワーなどが描かれた東京のビル群の中に巨大なカマキリがいるダックスフンドシリーズの絵を目にした時に、この絵の感じは自分が今イメージしているアルバムに近いものがあると感じて。それで中村さんのTwitterをフォローして、すぐにメンバーにも中村さんのことを話しました。
鷲見 僕もダックスフンドシリーズは前から知ってはいたんですけど、吉田から話を聞いて、すごく良いなと思いました。中村さんは日常を切り取った絵を多く描かれていますけど、吉田の歌詞も現実離れしたSF世界的なものではないし、きっと合うんじゃないかと思いました。
夕陽の光が浮かんだ
—— そこから実際に中村さんにイラストをお願いすることになるわけですが、中村さんは最初に連絡がきた時はいかがでしたか?
中村一般 吉田さんにTwitterでフォローしていただいた時には恥ずかしながらズーカラデルの存在は知らなかったんです。その後、レーベルの方を介してCDをいただき初めて聴かせていただいたんですが、それまで自分が聴いてきた音楽とは違ったタイプのもので新鮮に感じました。当時はまだ大学生だったんですが、普段はMOROHAとかを聴きながらひとりで絵を描いているような感じだったんです。
—— 初めてメンバーと中村さんが会ったのは?
鷲見 今年3月に東京でライブがあって、それを観に来ていただいた時ですね。
中村 初めてライブを観て、なんとなく“この歌詞わかる気がするな”と思う部分もいくつかあって、MCでは“自分のペースで楽しんでください”みたいなことをおっしゃっていて、そういう空気感もいいなぁと。
—— そこから具体的にアートワークの制作が始まっていったと思うんですが、どのようなプロセスで進めていったんでしょうか。
吉田 まず僕たちが伝えたのは、人が生活している場所をモチーフにしたいということでした。
鷲見 たとえばということで、札幌にある狸小路という街の写真などをお渡ししつつ、基本的には中村さんに好きなように描いてもらいたいとお願いしました。
山岸 アルバムの制作中でもあったので、レコーディング途中の音源も聴いていただきながらアイデアを膨らませていってもらいました。
—— いくつかのヒントをもらい、音源も聴いた上で中村さんはどんな絵を描いていこうと考えましたか?
中村 繰り返し音源を聴いていく中で一番印象に残ったのが『光のまち』という曲でした。イントロやサビの部分から、“夕陽”、“夕方5時のチャイム”みたいなイメージがパッと浮かんだんです。そうすると他の曲からも同じようなイメージが連想されて、強い夕陽の光を描きたいなと思ったんです。
夕陽という大きなイメージが出てからは、夕陽に照らされた狸小路という街をベースにした背景の中に、それぞれの曲を連想させる絵を入れていこうと思い、様々な絵を描いていきました。たとえば『漂流劇団』という曲からは最初にピエロの集団が思い浮かんだんですが、途中で、“漂流”だから“流氷”の上で流されているペンギンを描いてみようというような感じで。
ちなみにラフの段階ではペンギンはジャケットの中には3匹いたんですけど、最終的には1匹だけになっています。制作工程の中でいろんな絵を加えていく形でジャケットの絵が完成しました。それから意識したのは、見ていて飽きないジャケットにしたいということでした。手に取った人にとにかく楽しんでもらいたかったので、要素を詰め込めるだけ詰め込んでいきました。
途中のラフ段階のものをメンバーのみなさんにも見ていただいたんですが、“もっとワチャワチャさせてしまって大丈夫です。もっとやっちゃってください”と言われて。実は最初遠慮していたところもあったので、見透かされてたかと思いましたけど、そう言ってくださったおかげで勢いのある絵になったと思います。
インタビュー後編はこちら。
プロフィール
LIVE SCHEDULE
ズーカラデル「全国ツアー」追加公演 ※全公演SOLD OUT
2020年
1月25日(土)名古屋JAMMIN’
1月31日(金)渋谷CLUB QUATTRO
2月8日(土)大阪Music Club JANUS
スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2020
出演)KOTORI / Suspended 4th / ズーカラデル / ハンブレッダーズ
■公演日程
2020年
2月21日(金) 福岡 BEAT STATION
2月22日(土) 広島 CLUB QUATTRO
2月24日(月祝) 高松 MONSTER
2月27日(木) 札幌 cube garden
2月29日(土) 仙台 MACANA
3月1日(日) 新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
3月4日(水) 名古屋 CLUB QUATTRO
3月5日(木) 大阪 BIGCAT
3月7日(土) 東京 マイナビ BLITZ 赤坂
info https://www.spaceshowertv.com/retsuden/tour2020/
ズーカラデル Official Web http://gooutzoo.com/
ズーカラデル Official Twitter http://twitter.com/gooutzoo