HaaT 2022 SS COLLECTION
-FORWARD PAST-

風土に根ざした先人たちの優れた知恵と工夫も、ただ守ろうとするだけではやがて淘汰されていく。時代を経て、様々な文化が交わって進化することで伝統的な技はカタチを変えて新たに息を吹き返す

PHOTOGRAPHY: YURIKO TAKAGI
TEXT: Coyote

今シーズンのコレクションのテーマは「FORWARD PAST」。インドではカビラと呼ばれる伝統技法を用いて、HaaTは日本とインドの両側面から進化させた新しいものづくりを発表した。

刺し子は16世紀頃から東北を中心に日本各地で受け継がれてきた織りに施す補強・補修の伝統技法。しかし今回は北陸の産地で、縦編みトリコットジャカードで置き換えて仕上げた。そうして刺し子を柄として表現することで、特徴である生地の厚みを出すことなく、軽くてソフトな触感の「刺し子風」という新たな素材が完成した。糸の殆どはオーガニックコットン。

HaaTがこれまでインドで作ってきたカビラは、カディに施されることが多かった技法だが、今回は敢えてミルメイド(紡績糸織物)を使用。カディは手紡ぎゆえに風合いは柔らかいが、耐久性に欠けるという弱点があった。上質な素材とシンプルなデザインで、10年でも20年でも着られる丈夫さを求めたことから、今回は敢えて紡績織の使用に変えた。

また、このカビラのシリーズも含めてジェンダーレスに着られるラインナップが追加された。これまでは女性向けのデザインが多かったが、原点回帰として柄を入れないシンプルなデザインの服をサイズ展開も含めて増やしていくことで、男性も違和感なく着られるだけでなく、女性のファッションの幅も広げられる。

昨シーズンからHaaTは服づくりの方針として、現代の生活にフィットするエシカルで快適な服を3つのラインに分けて提案している。エコな原料や熟練した作り手から生まれた特別な日のための一着「EVERY MONTH」、汎用性が高くジェンダーレスに着られる高品質な一着「EVERY WEEK」、季節や気温変化にも対応する日々の一着「EVERY DAY」。

タテ糸とヨコ糸を交差させることで作られるテキスタイルのように、HaaTはあらゆるものを服の中で交差させる。新しく生まれ変わる伝統の技に服づくりの未来が見えた。

刺し子風ラッセル編み。刺し子をイメージした柄は、手で刺し子を入れたような雰囲気で、細幅と太幅の2柄を組み合わせて使用。織ではなくトリコット編み、糸は主にオーガニックコットンを使用したことで、織物とは一味違った柔らかさや風合いに仕上がった。直線を用いたポケットがアクセント
2020年秋冬のツイード/オーガニックコットンのコート。リバーシブルで提案
インドのナガランド伝統柄を表現したジャカード織。インドの山奥ではとても希少価値が高いとされる宝貝が柄のモチーフ。パンツ以外はリバーシブルに着用できる
BIAS KANGRI。縁の始末と装飾を兼ねて、縫い代を三角形に手縫いするインドの伝統技法
KYO CHIJIMI。暑い夏を快適に過ごすために作られてきた軽くしなやかな肌触りが特徴の定番シリーズ。新作は縦と横方向の縮みの縮率を利用して、豊富なデザインを展開

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