本屋のかお 銀座 蔦屋書店(東京・銀座)

本棚と書店員。二つの「本屋のかお」を通して、これからの街の本屋を考える――。世界中の高級ブランド店が集まるだけでなく、東京オリンピックを控え日本文化の発信地としても 注目されている「GINZA SIX」。連載第18回目は、そのワンフロアを担う銀座蔦屋書店を訪ねた

本屋のかお――銀座 蔦屋書店(東京・銀座)
本屋のかお――銀座 蔦屋書店(東京・銀座)
本屋のかお――銀座 蔦屋書店(東京・銀座)
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銀座中央通りに面して建てられた「GINZA SIX」。日本を代表する建築家、谷口吉生が手がけた壮観な外観はひさしや暖簾をイメージしていて、近代的だが伝統的な日本らしさも感じられる。人の流れに乗ってエントランスをくぐり、圧巻の吹き抜けに浮かぶ草間彌生のポップなインスタレーションを眺めつつエスカレーターを上がっていく。目的地の銀座蔦屋書店の店頭ではビッグブックと呼ばれる巨大アートブックに出迎えられ、奈良美智や名和晃平の作品が展示される店内はまるで美術館のようだ。その空間で選書を担うのが、コンシェルジュの美土路さん。「話したいことがたくさんあります」と文字でぎっしり埋まったメモを用意して取材に応じてくれた。

――最近、銀座の街はアートに力を入れている印象があります。

「もともと銀座は日本で一番画廊が多い街なんです。ただ、最近の現代アートの流れが六本木など他の街に移っている中で、もう一度アートの文化を銀座に呼び戻したいという思いがある。この銀座蔦屋書店も『アートのある暮らし』がコンセプトです」

――その中で、美土路さんは漫画を担当されています。

「基本的に蔦屋書店では漫画は取り扱っていないのですが、『漫画も日本の誇るアートのひとつだ』という上司の一声で、ここ銀座蔦屋書店では漫画を取り扱うことになりました。もともと漫画が好きだったので企画書を作って『やらせてください』と」

――どんな企画だったのですか。

「フロアの真ん中に日本を紹介している大きな棚があります。そこには江戸文化を中心とした“過去”がテーマの本が多いのですが、“現在”という部分が欠けていると思った。なので、それを漫画で表現できる企画を提案しました」

――大友克洋さんの『AKIRA』のカラー表紙が並ぶ棚が、美しくて印象的でした。

「実は『AKIRA』は2020年にオリンピックを控えた2019年の話で、限りなく現在に近い未来の話なんです。今の状況と重なっているような予見的な作品です。『AKIRA』が素晴らしいのは、色々な観点から作品を分析できて、自分の世界が広く深くなっていくところ。建築や民話など、一つの作品を起点に様々な発見や知識に繋がっていく。本を読む楽しさって、そういうところにあると思っています」

――どんな人にその楽しさを知ってほしいですか。

「観光で銀座に来る外国人のお客様も多いので、それを意識して作っている棚もあります。有名な漫画やアニメを入口に、まだ知らない日本の作品を知ってもらえたら嬉しいです。一方で、海外漫画にも素晴らしい作品がたくさんありますから、逆に日本のお客様にはそういったものも紹介して、新しい出合いのきっかけを作っていきたいです」

<プロフィール>
美土路奈々
(みどろなな) 入社2年目。コンセプトがアートだったことに惹かれ銀座蔦屋書店への配属を希望し、店舗の立ち上げプロジェクトから携わる。現在は漫画担当のコンシェルジュとして選書、イベント企画等を手掛け、新たな切り口での店頭展開を日々考案中

 

【今月の棚】

本屋のかお――銀座 蔦屋書店(東京・銀座)

一つの棚の前にいろんな世代の人がいるような風景になったらいいな、と思っています。その作家を知っている世代だけが楽しめる棚ではなく、若い世代が昔からある名作を、ご年配の方が今も連載中のような新しい作品を手にとってくれると嬉しいです

 

【語りたい3冊】

本屋のかお――銀座 蔦屋書店(東京・銀座)

『AKIRA(1)』大友克洋(講談社)中学校一年生の時に出合い、大きな影響を受けた1冊 

『スローモーションをもう一度(1)』加納梨衣(小学館)80年代のカルチャーに憧れている現代の高校生の話。王道のときめきをくれる少女漫画ですが、懐かしいアイドルの曲やアイテムを通して恋が発展していくところが新鮮です 

『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』原正人(玄光社)海外漫画を勉強しようと付箋だらけにしながら読みました。一つの作品を複数の視点から説明していて、教材として素晴らしい

<店舗情報>
銀座 蔦屋書店
東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX 6F
9:00-23:30

(本稿は10月20日発売『SWITCH Vol.35 No.11』に掲載されたものです)