ジョナサンがランウェイのラストに登場するたび、そのシンプルな出で立ちに驚かされる。そんな彼の姿からは、飾らない人柄とクリエイティブに対する実直な態度が感じとれる。
今年10月にJW Andersonの直営店が渋谷PARCOでオープンし、ジョナサン・アンダーソンの来日が決定した。自身のブランドであるJW AndersonとLOEWEという二つのラグジュアリー ブランドのデザイナーとしてクリエイティブに向き合う彼に話を訊いた。
—— 二つのブランドのデザイナーを務め、名実共に国際的なデザイナーになられたと思うのですが、その事があなたのクリエイションに与える影響はありますか？
「年を取るにつれて自信を持つようになったというのもありますが、自分が集中したい事がよりクリアに見えるようになったと感じています。ブランドもこれだけ大きくなってくるとリソースも大きくなっていきます。それによって、今まで自分が実現したかった夢が叶えられるようになりましたね」
—— “夢”とは具体的にはどういったことでしょうか？
「JW Andersonの実店舗が東京に完成したという事が挙げられますね。日本は私が好きな国の一つなので、大変嬉しかったです。日本に来るたびに、日本のファッションというのは特別だと感じていますし、クリエイションに対する理解度も高いと思います」
—— 前回のコレクションを拝見しましたが、粘土でできたフーディにとても驚かされました。ここ最近はシルエットやフォルムに関心があるように思いますが、その理由を教えてください。
「『フォーカスをする』ということをお話ししましたが、私が今フォーカスしたいのが“シルエット”なのです。ここ最近のデザインの変遷はシルエットへの興味が影響しています」
—— ファッションが生産される背景やクラフトマンシップについてどう考えていますか？
「クラフトマンシップにはとても興味があり夢中になっています。素晴らしい人材がいるからこそ、JW Andersonのクオリティやファンダメンタルズが確保されていると考えています」
—— 渋谷PARCOにの実店舗がオープンしましたが、店舗というものはブランドにとってどのような付加価値を与えるものだと考えていますか？
「店舗というものは非常に大切な存在だと考えています。パンデミック以降、アイテムを手に取って吟味するという事に重要性を感じる人が多くなったと思います。また、店舗というのは、私が頭の中で考えている世界観を表現するための場であると思っています。実ははウィンドー デザインの仕事をしていた事もあるんです」
—— コレクションの中で動物のモチーフをよく使われますが、なぜでしょうか？ 動物に対しての思い入れなどはありますか？
「理由は特にないんですが、鳩なんかはユーモアな存在として表現に取り入れたりしています。もちろん可愛いという理由もあるんですが、ユーモアを感じさせたい時に登場させたりしていますね」
—— 最後に、日本での滞在で楽しみにしていることはありますか？
「いつも同じギャラリーやお店に行きますね。あとは、バーです。これだけは外せない。日本に来るたびに新たな発見があって、様々な物を購入するから帰る頃にはスーツケースの量が増えていたりします。あと、日本人のファッションに対する組み合わせが面白いと感じていますね。ただ、滞在日数がいつも短いので、今回も京都に行きたいけどいけませんでした。仕事がひと段落したタイミングで訪れたら、もう少し時間が取りたいですね」
