木梨憲武に訊く、やまなみ工房との出会いと協業への思い。ecostoreから木梨憲武とやまなみ工房がコラボレーションしたアートボトルの洗剤・柔軟剤を数量限定で発売。

TEXT:KAWAKAMI HISAKO

「やまなみ工房との最初の出会いは、オレ宛に届いた一通の手紙からでした。何気なく手紙を開けてみたら、やまなみ工房のみんなの作品が目に入ってきて、これはすごいぞと思ってすぐに山下くんにコンタクトを取りました」

木梨憲武はやまなみ工房との出会いを楽しそうに語った。

やまなみ工房は滋賀県甲賀市にある障がい者福祉施設だ。障がい者が従来行っていた下請け中心の生産活動を見直し、個が自分らしく過ごせるようそれぞれにあった表現活動を行えるように支援をしている。前述の手紙は、やまなみ工房の所長を務める山下完和が利用者の作品を木梨に一目見て欲しいという思いから投函したのだという。

一通の手紙から始まった木梨憲武とやまなみ工房の出会いがコラボレーションへと繋がっていく。株式会社ecostore JAPANが展開するホーム&ボディケアブランド「ecostore(エコストア)」から、やまなみ工房に所属するアーティストである岡元俊雄と田村拓也のアート作品に木梨憲武が筆を加えたアートワークを使用したコラボレーションアートボトルの洗剤と柔軟剤が数量限定で発売されたのだ。ecostoreはgelato piqueやSNIDEL、Cosme Kitchenなどのブランドを展開するマッシュグループに所属しており、2023年より木梨はマッシュグループのウェルネスデザイナーを務めている。木梨がやまなみ工房と交流を深めていく中で、屈託なくアートに取り組む利用者の在り方に惹かれ、今回のコラボレーションを実現するに至った。

「寝っ転がって絵を描いているアーティストなんかもいるんですよね。やまなみ工房には言葉を介してコミュニケーションを取るのが難しい方々もたくさんいる。だから、ボディーランゲージというか、オレも横に寝そべってみて絵を描いていいか少しずつ伺いながら近づいていくんですよ。すると、意外にも受け入れてくれてね、二人で寝ながら絵を描きました。あとは、7月に行った音楽イベント「木に梨はなる 真夏の大収穫祭2024〜みんなのアートミュージック〜」にやまなみ工房のみなさんに参加してもらったんです。みんな笑顔で飛び跳ねて踊ってくれたのが嬉しかった。」

木梨の言葉からは社会福祉をしよう、というような忖度が一切感じられない。ただ純粋に、新しい友達を見つけた時の“喜びと好奇心”が言葉の端々に満ち溢れている。ボトルに描かれたアートワークは岡元俊雄と田村拓也という二名のアーティストの作品上に木梨が筆を加えている。自身も画家として作品をつくっている木梨だからだろうか。筆を加えるという行為にも、二人への気遣いが垣間見える。

「アーティストの作品の上にオレが勝手に手を加えていいのか、それで納得してもらえるのかドキドキしていました。山下くんに聞いてみたら怒ってなかったみたいなんで、ホッとしました。」

木梨とこのプロジェクトを行うに当たって、山下はどのような思いを抱いたのだろうか。

「まず印象的だったのは、木梨さんからお電話をいただいた事でした。まさかご本人からお電話をいただくとは思っていなかったので。話していく中で、障がい者や健常者という区切り方をしないフラットな姿勢を持った方だと言うことに改めて驚かされました。木梨さんとの取り組みによって、利用者やそこで働く我々、さらにやまなみ工房がある滋賀甲賀市のみなさんにとっても幸せな思いが広がっています。」

さらに、このコラボレーションボトルの売上金の一部はマッシュグループが取り組む被災地復興支援「マッシュパークプロジェクト」へ寄付をされ、東日本大震災などで被害を受けた土地に公園を建設するプロジェクトに充てられる。販売は11/15(金)からecostoreアトレ恵比寿店とオンラインサイトを皮切りに、12/2(月)より全国のCosme Kitchen・Biopleで発売予定。

特設サイトはこちらから https://ecostore.jp/Page/campaign/2024/KinashixYamanami/

木梨憲武

1962年東京都生まれ。高校時代の同級生、石橋貴明と「とんねるず」を結成。 NTV『お笑いスター誕生』で10 週勝ち抜きグランプリを獲得。 CX『オールナイトフジ』、KTV『ねるとん紅鯨団』、CX『とんねるずのみなさんのおかげです』『とんねるずのみなさん のおかげでした』等、数々のバラエティー番組を担当。 歌手としても NHK『紅白歌合戦』に3つの名義で4 度 出場している。 画家としても自身でアトリエを持ち精力的に活動しており、これまでに国内では9度の個展を開催。アメリカ・ニューヨーク及びイギリス・ロンドンでの海外個展でも成功を収める。

山下完和

1967 生まれ。社会福祉法人やまなみ会やまなみ工房施設長。様々な職種を経た後、1989年5月から、障がい者無認可作業所「やまなみ共 同作業所」に支援員として勤務。その後 1990 年に「アトリエころぼっくる」を立ち上げ、互いの信頼関係を大切 に、一人ひとりの思いやペースに沿って、伸びやかに、個性豊かに自分らしく生きることを目的に様々な表現活 動に取り組む。2008 年5月からはやまなみ工房の施設長に就任し現在に至る。