LITTLEBIG 2022年春夏 デザイナー 馬渡圭太インタビュー

LITTLEBIG 2022年春夏 デザイナー 馬渡圭太インタビュー1

TEXT: Kawakami Hisako

 
ブランド設立から10年目の節目を迎えたLITTLEBIGが、今年初めて東京でランウェイ形式の発表を行った。デザイナーの馬渡圭太は人気セレクトショップ「CANNABIS(カンナビス)」のバイヤーを長年務め、その活動と並行して独学でパターンやデザインを学んできた異色の経歴。ランウェイを終えたLITTLEBIGデザイナー馬渡圭太に話を訊いた。

バイヤーからデザイナーへ

—— CANNABISのバイヤーをされていたとお聞きしました。バイヤーを経て、デザイナーとしてLITTLEBIG設立に至った経緯をお聞かせください。

「ずっとCANNABISでバイヤーをしつつ、同セレクトショップのドメスティックブランドを手掛けていた時期がありました。デザイナーの名前を出さずに、架空のデザイナーを立てているブランドがあったんです。そこを任されるようになってから、少しずつ服をデザインするようになっていきました。自分で服を作りたいとは特に思っていなくて、最初は社内の業務という感覚でしたね。でも、それをきっかけに段々とデザインすることが面白くなってきて。ある時、CANNABISで関わらせていただいたデザイナーの方々とご飯に行く機会があって、デザイナーとして自分のブランドを作りたいという相談をしたんです。そういった先達の方々に色々なお話しをさせていただいて、生産管理や資金面含めて、今ある服作りの環境を徐々に築いていきました」

LITTLEBIG 2022年春夏 デザイナー 馬渡圭太インタビュー2

ブランド設立10年目で初めてのランウェイ

—— ブランドを立ち上げてから、東京コレクションのランウェイという大舞台に踏み出したのにはなにか理由はりありますか?

「ブランドを始めた当初から、「一度始めたらいけるとこまでいこう。」という思いがありました。正直、僕が得意とするテーラードって、ここ十数年はあまり注目されていないアイテムなんですよね。若者のトレンドはストリートやノームコアが中心で、なかなかテーラードをメインに着ている子はいない。でも、時代は巡っていくし、いつかまたテーラードが流行する時代が来ると思っています。今はメインストリームじゃないからなにもしないという消極的な態度はなにか違う気がしていました。心のどこかでモデルがテーラードを格好良く着こなしたランウェイがしたいと思っていました」

LITTLEBIG 2022年春夏 デザイナー 馬渡圭太インタビュー3

「あと、今はデザイナーの仕事だけで生活してるんですが、このブランドで食べていこうと決めた時に周りの人に随分止められたんです。CANNABISのバイヤーとしてここまで上手くいっているのに、それを辞めてデザイナーに転向するなんでもったいないと。でも、自分のなかでバイヤーであることとデザイナーの自分が両立出来なくなっているのを感じていました。耐えきれなくなってしまう前に、デザイナーだけでやっていこうとを決めました。

ブランドを長く続けていくのは簡単ではないですし、本当に様々な人に支えられてここまで続けてこられたという実感があります。ブランド設立10年目でランウェイをした理由のひとつには、そういった方々への恩返しの気持ちがあります。コロナの影響もあり、卸のお店も以前のようには客足が戻らず、みなさん厳しい状況を強いられています。だからこそ、このタイミングで皆様にお見せできる大きな仕掛けをしたいな思ったんです。そういった経緯があって、前回のシーズンを作った時、ルックブックの撮影が上手くいったら、東京でランウェイをしようと決断しました。結果、撮影が非常に上手くいき、その瞬間ランウェイをやろうと決意しました」

LITTLEBIG 2022年春夏 デザイナー 馬渡圭太インタビュー4

テーラードジャケットにかける思い

—— 馬渡さんのなかで、テーラードジャケットへのこだわりや愛情の原点なのでしょうか?

「僕の父親がサラリーマンだったんですね。本当に普通の企業で働いているような人で。特に趣味もないし、休日はお洒落をするわけでもなくジャージを着て、家でごろごろ寝てばかりいて。でも、平日になると打って変わって、ビシッとスーツを着て会社に出勤する。スーツを着た父親は見違えるように格好よくて、子供ながらにスーツというものに憧れを抱くようになりました。そこから、お年玉やお小遣いを貯めて、中学生の時に初めて白いテーラードジャケットを上下で購入したんです。僕が最も重要だと思うアイテムはテーラードジャケットとジャージ。そのふたつを組み合わせてスタイリングするのも大好きですし、普段の自分のコーディネートにもそのふたつは欠かせないアイテムになっています。思い返してみれば、どちらも父親の影響があるなとしみじみ思いますね」

馬渡圭太 1983年青森県出身。文化服装学院スタイリスト科を卒業。在学中からセレクトショップ「FACTORY」で働き、その後「CANNABIS」バイヤーに。現在はLITTLEBIGのデザイナーとして活躍。デザインだけではなく、音楽への造詣も深くDJなどの活動も行なっている