1990年冬、映画『ホーム・アローン』は誕生した。一人家に取り残されてしまった少年ケビンと泥棒が見せるコミカルな攻防劇、そしてシカゴの街に訪れたクリスマスの美しさが楽しめる本作は、クリスマス映画の大定番として30年近くが経った今でも老若男女から愛され続けている。
そんな映画『ホーム・アローン』を世に放ったのは、『ミセス・ダウト』や、ハリー・ポッターシリーズの初期3作品、『ナイト ミュージアム』などのヒット作を次々手掛けてきた映画監督、クリス・コロンバス。
現在は自身が設立したプロダクション「1492ピクチャーズ」でプロデューサーとしても作品制作に携わっているクリス・コロンバスだが、そんな彼が手掛けた新しいクリスマス映画『クリスマス・クロニクル』が、Netflixのオリジナル作品として公開となった。この作品について、クリス・コロンバスに単独インタビューした。
「クリスマス映画は世の中にたくさんありますけど、僕たちは今までに誰も見たことがないようなものを目指しました。そこでまず最初に考えたのは、サンタクロースをどう描くか。これまでの常識や概念を打ち破るようなサンタクロースを一から作り出したい、と思ったんです。
結果、カート・ラッセルが魅せたサンタクロースの姿は完璧で、友人から『子供たちがサンタクロースといえばカート・ラッセルが演じたあのサンタ以外は考えられないようになってしまった。どうしてくれるんだ』と怒られたよ(笑)。そんなサンタが監獄の中で歌うミュージカルナンバーが、本当に最高なんだ。」
今までに見たことのない、全く新しいサンタクロース。サンタをまっすぐに信じる妹ケイトと、素直になれずに葛藤する兄テディとの兄弟愛。笑いあり涙あり、たくさんの夢が詰まったクリスマス映画として、この『クリスマス・クロニクル』は今後も愛され続けるだろう。だが、この作品の魅力はそこだけではない。映像作品におけるたくさんの可能性がこめられているのだ。
「今回のこの『クリスマス・クロニクル』を制作するにあたって、非常に大事なキーワードは“オリジナル”であるということ。かつてはこういったファンタジー映画も、大きな予算を使って撮れた。そんな時代があったんです。
だけどいまは、既に何度も制作されてきた作品のリメイクであったり、シリーズものであったり、そういうものしか撮れない時代になってしまった。私は自分でインディペンデントの映画制作会社を持っていますが、そこでもやっぱりビッグバジェットの映画は制作できない。
では何故今回全くのオリジナルでこういったファンタジー映画が制作できたのかというと、それはやっぱりNetflixだったからなんです。
アルフォンソ・キュアロンの『ROMA』や、マーティン・スコセッシの『The Irishman』といった作品も、スタジオでは大きな予算を使って撮れなくなってしまったけれど、Netflixでは撮らせてもらえるんです。
Apple社がコンピューターやコミュニケーション機器の世界を変えたように、Netflixは僕たちフィルムメーカーにとってとても大きな存在になっています」
現在190カ国で視聴され、そのメンバー数は1億3000万人を超えるNetflixだが、いまや単なる映像配信サービスを提供するだけでなく、映像クリエイターたちに寄り添いともに成長していく企業として、数多くの取り組みを行っている。
その中でも注目したいのが、SONY BRAVIAとの共同開発によって誕生した「Netflix画質モード」である。Netflixのディバイスパートナーエコシステムを担当するスコット・マイヤーは、映像体験を提供していく中で大切にしていることに「利便性」と「美しい映像」の二つをあげる。
最高品質の映像そして豊かなサウンドが簡単な操作で再生できること、それが視聴者に楽しんでもらうためには必要であると考えているのだ。美しい映像、それは、映像の作り手がそこにこめた思いや意図を再現している映像である、ということ。そして、クリエイターが伝えたいと思うストーリーを多くの視聴者に伝える、という思いに共鳴したのが、“LENS TO LIVING”をコンセプトとして掲げるSONYだった。
“LENS TO LIVING”には、制作時のカメラレンズと家のリビングルームを繋げたいという思いがこめられている。制作者の意図を忠実に再現した映像こそが、最大限の感動を視聴者に届けられる、とSONYは信じているのだ。
SONY BRAVIAの“秘伝のタレ”と呼ばれるさまざまな映像のバロメーターといった情報がNetflixに開示され、両者間での試行錯誤が繰り返された結果生まれたこの「Netflix画質モード」は、制作者の意図した映像を自宅にいながらにして体験することを可能にした。『クリスマス・クロニクル』をこのモードで初めて視聴したクリス・コロンバスは、「映画史における革命と言っても過言ではない」と頷いた。
「映画は撮ることも大変ですが、その後の映像調整作業には撮影にかかった時間の3倍近くの時間がかかります。でも、それだけの時間をかけてこだわった映像も、テレビで見ると全然違うものになってしまっている。心底がっかりします。
先ほど初めて『クリスマス・クロニクル』をNetflix画質モードで見たのですが、椅子から飛び降りてしまいたくなるくらいに驚き、嬉しかった。現場に戻ったのか? と錯覚してしまうくらい、ちゃんと制作時の映像が再現されていました。
例えば、トナカイのシーン。トナカイの表現にあたっては、今までどの作品を見てもリアリティに欠けると感じていたのですが、今回の『クリスマス・クロニクル』ではトナカイの表情や一生懸命飛ぶ姿をしっかり描くことで、ちゃんとしたリアルな描写を目指しました。
Netflix画質モードで見るトナカイにはCGぽさが一切なく、毛皮に触れられるのではと思えるほどにリアルでした。そして、妹のケイトがソリから落っこちてしまうシーンでは、視覚効果から音響まで大迫力で、この画質モードの魅力を最も感じて頂けるシーンだと思います」
今までの映画鑑賞とは全く違うスタイルで、しかしその映像体験を凌ぐ感動を与えてくれるNetflix。クリス・コロンバスは、一映画ファンとしてその魅力をこう語った。
「昔、スティーヴン・スピルバーグ監督から『子供だけに受ける映画は絶対に作るな』と教わったことがあります。ファミリー映画ではあっても、大人もちゃんと楽しめる作品でなくては駄目だ、と。だから僕は、“5歳から80歳が楽しめる作品”ということを意識して制作しています。みんなが一緒になって体験できる作品を作りたいと思っています。
今回初めてNetflixの作品を制作して、周りの人に『Netflixでつくってくれてありがとう』と言われたんです。『家族で見て、それから親戚も集まってまた見て、映画館に行っていたらチケット代にポップコーン代に、450ドルくらい払うことになっていたよ』とね(笑)。いろんな人と何回でも見られるのが素晴らしいよね」
映画を生み出す人たち、そして映画を鑑賞する人たち。Netflixは双方に新しい喜びをもたらす。制作者たちが作品にこめた思いやメッセージをしっかり感じたいと願う映画ファンには是非、Netflix画質モードが搭載されたSONY BRAVIAで思う存分作品の世界に入り込んでみて欲しい。