■WEAR――学生さんですか?
――次は「WEAR / 服づくりの冒険」。写真家は若木信吾さんです。ご自分で作られた服を着て撮影しました。これまで20着以上の洋服を製作されたそうですね。
のん はい、お家でカタカタ作っています。
――撮影の際に着用された衣装は新しいものなのですか。
のん 比較的最近のものです。スケジュールの関係上、だいぶ間が空いてしまったのですが、今も製作途中のものがあります。それは直線の布を使って製作しています。布を丸く切ったりするのではなく、まっすぐなものを直線縫いでつなぎ合わせて作る方法を応用して作っています。
――そのうちファッションデザイナーとしてののんさんを目にする機会が出てくるのではないかと思います。
のん その新作の生地を買いにいったときに、新鮮だなあと感じたことがあって。ある生地屋さんに行ったのですが、冬物の厚手の布が全部高くなっていたので、安い端切れのコーナーを見たんです。「あ、これいいな」と思って、レジに持って行ったときにレジの店員さんに「~~ですか?」って訊かれたんです。それで、「え、なんですか?」って聞き返すと、「学生さんですか?」って。
のん 「あ、違います」って応えたのですが(笑)。学生さんだと学割で端切れの布とかが安くなるみたいで。そのときちょっと子どもっぽい服装していたから学生に見えたのかなって。
――気づかれなかったんですね。
のん そうみたいです。そのときの自分の服装は、自分からも見ても学生っぽかったので。あと端切ればっかり買っていたからそう見えたのかなって。学生さんですかと聞かれるのが新鮮でした。
■DRAW――美大に行きたくて
――次は新津保建秀さん撮影の「DRAW / キャンバスの上の冒険」です。女子美術大学に行って絵を描かれました。のんさんが画材を購買部で購入したのですが、そのときに蛍光の色が入っていましたね。
のん そうですね、蛍光の色が入っていたと思います。
――それで今回の表紙の文字は蛍光色にしたんですよ。
のん ああ、そうだったんですか!すごい!細やかな演出、ありがとうございます。
――蛍光色が好きというのには、何か理由があるのですか。
のん なんででしょう、目立つからですかね? こういう暗い赤とか黒とかの中に入り込んでくる明るい色は、コントラストがあって好きなんですよね。
――暗い部分と明るい部分が混在している。
のん そうですね。ここで描いた作品は、上から無理矢理に塗ったら面白い感じに仕上がったので、お気に入りです。
――撮影場所はすごい部屋でしたね。
のん 本誌ではのんしか写っていないのですが、一つの教室の中にアトリエのようになっているスペースがいくつもあって、女子美の学生さんに混じって描いていました。
――同じような状況で描いている人が10人くらいいましたよね。
のん いらっしゃいましたね。すごく緊張しました。部外者が足を踏み入れていいのかって。
――そのときちょうど卒業制作の追い込みの時期だったんですよね。のんさんが入ってきても誰も反応しないくらい集中していました。昔は美大に通って、絵を描いてみたいと思ったこともあったそうですね。
のん そうなんです。高校三年生のときに美大に行きたくて、まさにこの杉並の女子美のオープンキャンパスに行って、デッサンのワークショップに参加したりしました。撮影のときはすごく女子美の先生が褒めてくださいました。のんフェスに来て下さった方もいらっしゃって。お会いするたびに、「ぜひ女子美に入って欲しい」って(笑)。は、入れるものなら……、という感じです。
――あとはアート関連だと、先日パリに行かれました。そのときはいかがでしたか。
のん パリは新鮮でした。初めて行ったのですが、お金を掏られたり、鞄を持って行かれたりしないか恐怖で、厳重にコートの中に鞄を背負ったりしていました。結局、そんなことは全くなくて平和だったんですけど(笑)。
――観光にはいかなかったのですか。
のん 行かなかったですね。お仕事で行かせて頂いていたので。でもすごく楽しかったのです。ルーブル美術館の地下にある「カルーゼル・デュ・ルーヴル」という場所に私の絵が飾られたので、それを見に行ったのですが。見つけた途端に気持ちが高ぶるというか、興奮して。嬉しかったですね。
――展示された作品はどのようなものですか?
のん 大きいキャンバスに絵を描いて、穴を開けて、キャンバスに開けた穴から覗くと、裏側に細工したものが鏡で見えるという、ちょっと変わった作品です。現地で覗いてみたら、キャンバスの後ろに付けた絵の具やら手袋やらの一部が、ポロっと落ちていて。でも奇跡的にわざとやったように見えてすごく感動しました。
――いつか日本でも展示の機会があるといいですね。見たい方が多いと思います。
のん そうですね、展示したいです。