【編集後記】
「SWITCH 特集 30年目の福山雅治」(11月20日発売号)

SWITCH Vol.38 No.12 特集 30年目の福山雅治
TEXT:SWITCH

 今年デビュー30周年を迎えた福山雅治をSWITCHの表紙巻頭特集として迎えるにあたり、最初に決まったのは「30年目の福山雅治」というタイトルだった。「福山雅治の30年」ではなく、「30年目の福山雅治」。字面としてはほんのわずかな違いだが、意味するものは大きく異なる。前者の視点は現在から過去に向けられたもので、後者のそれは現在そのもの、そしてその先の未来へと向けられている。この30周年のアニバーサリイヤーの冒頭、今年3月に行われた無観客ライブで発表された新曲「始まりがまた始まってゆく」を初めて耳にした時から、この特集の方向性は定まっていたように思う。ここからまた始まる福山雅治の新たな一歩を記すこと——

 表紙巻頭のファッションシューティングは、まさにそんな福山雅治の新たな一歩を象徴するようなフォトセッションとなった。COMME des GARÇONS HOMME PLUS、Yohji Yamamoto、BOTTEGA VENETA……最新のハイファッションを身に纏い、美しくポーズを決めていくその佇まいは、ミュージシャンや俳優として馴染み深い「あの」福山雅治とはまったく異なるものだった。作り手の思いが強く込められた服は、ここを見てもらいたい、こういうふうに着てもらいたいという“声”が聴こえてくるんです—— 撮影中、福山はそんなことを話していた。その微かな声に耳を澄ませ、優しくハーモニーを重ねるかのように、シャッターの音に合わせて流麗に身体を動かしていく。まるでミュージシャン同士のセッションのような、福山雅治とハイファッションによる“表現”をそれらの写真から感じてほしい。

 もちろん、写真だけでなくロングインタビューや楽曲解説、写真家奥山由之との特別対談など、トータル4万3千字におよぶ膨大なテキストも読み応え十分。巻頭ロングインタビューでは、ミュージシャンとして、エンターテイナーとしてだけでなく、社会に生きる一人の人間としてこの2020年という未曾有の1年を福山雅治はどう過ごしてきたのか、そして来るべき6年8カ月ぶりのアルバム『AKIRA』に込められた亡き父への思いと、表現者としての自身の原点が真摯に語られる。

 またデビュー曲「追憶の雨の中」「桜坂」「家族になろうよ」など代表曲10曲の“歌詞”に焦点を当てた、福山流作詞術に迫るインタビュー「10 SONGS, 10 STORIES」では、これまで語られてこなかった制作秘話の数々が明かされる。

 デビュー30年目を迎えた表現者・福山雅治の「今」が詰め込まれた巻頭特集。日本のエンターテインメントの第一線を走り続けてきた彼の、知られざる新たな一面を本特集でぜひ知ってもらえたらと思う。



SWITCH Vol.38 No.12
特集 30年目の福山雅治
1,000円+税

スイッチオンラインストア特典 表紙A2ポスター

WEB特典:

 

ISBN:978-4-88418-5350
2020年11月20日刊行