SWITCH 10月号のV6特集を企画・編集・取材・執筆しました、ライター兼編集者の鳴田麻未です。まず、今号をすでにお楽しみいただいた方に深く御礼申し上げます。
私の手元には、A4サイズ4枚の企画書があります。V6が解散を発表した今年3月、彼らのファンとして茫然自失となる一方で、編集者として武者震いしながら作成し、SWITCH編集部に持ち込んだものです。今特集の実現には、半年以上、もっと言えば15年以上を費やしました。「自分にしかできないV6の特集記事を作って世に出す」ことは、私が半生追いかけてきた夢です。その日を目指してあらゆる構想を練り、何度もトライを繰り返し、企画や質問項目を記したメモは10年以上加筆修正しながら持ち歩いてきました。
今回の特集の企画意図にはこう書きました。
「四半世紀以上、1人もメンバーが欠けずに第一線でクオリティの高い歌と踊りを披露し続け、円満な形で完結するアイドルグループは、日本はおろか世界でも類を見ません。この幸せなクライマックスをV6は、どうして迎えられるのか? どんな境地で迎えるのか? ひいては、一体どんなグループだったのか? 彼らの真の魅力や凄さはどこにあるのか? 今一度ファンに訴えると同時に、カルチャーを深く愛するSWITCH読者の皆様にも、V6の足跡や創造物、40代の男たちが人生を考えて決断した想いを伝えたいと考えています」
企画の提案媒体は、V6の掲載歴はないけれど、濃厚かつ丁寧な取材記事に定評があり、以前私も仕事をさせてもらったことのあるSWITCHが相応しいのではないかと考えました。そして時間をかけて準備をし、特集のイメージを練り上げていきました。
その結果、今回の特集はフォトストーリーと、メンバー6人へのインタビュー原稿、と決まりました。アーティストサイドと他のいろいろな可能性も模索し提案しましたが、これが今できる最大限のことでした。
特集テーマについて。V6には、「飾らない、等身大」の美学のようなものが昔からあります。アイドルという、虚構や飾り付けの多いフォーマットの中で、真逆をいく姿勢です。でも、これはファンに誠実でいるということでもある。そもそもこの美学がどう形作られているのか、私は気になっていました。そこで、彼らの真摯なグループ観と、1人の人間としての人生観を浮き彫りにするため、当時のV6のプロモーションコピー「#今がいちばんであること」に倣って“今の自然体の6人”と“表現者としての純粋な想い”にスポットを当てることにしました。これが特集タイトル「THE WAY WE ARE」に繋がっています。
フォトストーリーのテーマは「V6という“グループの姿”を写真で捉える」ということでした。フォトグラファーは、V6とは初セッションとなるTAKA MAYUMI氏。メンバー1人ずつをフィーチャーした写真では、フォーカスメンバーの周りを他のメンバーがさまざまなポージングで動きながらランダムに映り込んでいます。これは個々に独立した魅力がありながら、メンバー同士が絶妙に影響し合い集団としても輝きを放つ、V6のグループ性を表しているつもりです。そして特集最終ページの集合カットは、“6人で描いた円(縁、WA)”を表現するため、緩やかに円状になっていただきました。このように今回の写真には全て意味があります。V6らしい写真を残そうと、制作チームで3時間以上の打ち合わせをして撮影に臨みました。
当日は、カメラが趣味の岡田さんがフィルム機材に興味津々でフォトグラファーと話したり、井ノ原さんがフォトグラファーのテンションに呼応して「フォー!」とシャウトしたり、1人の周りで動くブレ担当のメンバーたちが「面白くブレよう」と遊びだしたりと、終始和やかなムードでした。肩の力を抜いたソロのポートレートカットにはそんな現場の雰囲気が表れたかのように、6人はナチュラルな表情を見せてくださいました。ぜひ誌面で確認してみてください。
ちなみに、スタイリングのオーダーは「コンテンポラリー」。スタイリスト・吉本知嗣氏の考えるコンテンポラリー観やそれぞれのキャラクターをマッチングさせ、スーツではなく、カルチャー誌SWITCHならではのV6の衣装ビジュアルを目指しました。吉本氏曰く「色味、素材感、テイストもみんな違うけど、一部がリンクしてる人もいたり。一見バラバラなようでいて、全員が集まった時の繋がりや統一感が見えたらいいなと思いました。タイトなスケジュールでしたが、何かに導かれるようにすんなり決めることができた。自分としてはすごく満足しているビジュアルです」とのことでした。
そしてインタビュー取材です。取材前に決めていたこと、前提はたくさんあります。メンバーを「仲が良い」とは表現しない、年数やメンバーが欠けなかったことや解散というワードをこちらから殊更に出さない、自分なりの思いは伝えつつひとりよがりにならないようにする、エモに走らない、等々……。反響も見込んでいましたし、ファンだからこそいつも以上に注意深くなる必要がありました。
いきなりですが、これは訊かないと決めていた質問ベスト3がこちら。
3位「メンバーの存在はどんなもの?」
2位「この26年を一言で表すなら?長かったor 短かった?」
1位「あなたにとってV6とは?」
こうしたQ&Aは見たことがあるし、そもそもこれは、しっかり関係値のある人に10年に一度ぐらい問われて答えるから意味のあること。初対面の若輩者がおいそれと訊くなんて陳腐すぎます。そう、最低限の説明は必要だけど、メディアで何度も出しているお決まりのエピソードはいらないと思っていました。だから過去ではなく今のことにフォーカスを当てました。
設定した大テーマは「今考える、V6自身の“アーティスト観”と1人の人間としての“考え方、生き方”」。自分にしかできない仕事をする、と決めていたから、ファンであることは隠さず言いました。「そんな人(小学生の頃からV6ファンだという人)が取材に来るようになるんだねー」「よく知ってますね」と笑いながら、質問ひとつひとつに対してじっくり考え、こちらの解釈が違うところは違うと否定し、真摯に向き合ってくださったV6の皆さん。そのプロ意識に感服し、感謝しかありません。
取材から原稿にする上での取捨選択や言葉選びも、かなり考え抜いて進めました。一文一文、V6らしさやその人らしさを失っていないか、私自身のオリジナリティは入っているか、間違った思い込みに走っていないか。感想を拝見すると読んだ方にも感じ取ってもらえたようですが、冷静さは失わないように気をつけながらも、彼らへの愛と感謝とリスペクトをこの特集の全てに込めました。私が彼らからそれをもらってきたからです。
長文になってしまい申し訳ありません。あらためて、このような気持ちを込めた特集を完成させることができて万感の思いです。全関係者の皆様ありがとうございました。V6を応援する方、興味のある方に1人でも多く届き、これからも読んでいただけたら幸いです。
最後に、私がこれまで制作したV6特集と原稿にも登場した関連クリエイターへの取材記事を貼らせていただきます。今回のテキストを咀嚼する上で参考になると思いますので、よろしければ。V6の記載があるものは★付けます。
★V6「kEEP oN.」西寺郷太&corin.インタビュー- 音楽ナタリー特集・インタビュー(https://natalie.mu/music/pp/v6?nosp=1)
・WOWOW「森山直太朗コンサートツアー2013~14『自由の限界』~そろそろ本当の俺の話をしようか~」森山直太朗インタビュー- 音楽ナタリー特集・インタビュー(https://natalie.mu/music/pp/naotaro_wowow)
★V6「V6 LIVE TOUR 2015 -SINCE 1995~FOREVER-」特集- 音楽ナタリー特集・インタビュー(https://natalie.mu/music/pp/v6_02)
★s**t kingzが考える、J-POPシーンにおける振付の“重要性”- Real Sound|リアルサウンド(https://realsound.jp/2017/04/post-12127.html)
・金閣寺で踊ったs**t kingzが感じた、ダンサーの社会的地位の変化- インタビュー: CINRA.NET(https://www.cinra.net/interview/201808-shitkingz)
・完全1人ツアーに臨むKREVAが語る、揺らぎの最適解「MPC3000」| Rolling Stone Japan(ローリングストーンジャパン)(https://rollingstonejapan.com/articles/detail/29420)
★YOSHIEが明かす、ダンスと振付へのピュアな情熱 「技術だけじゃなくて心が反映される」- Real Sound|リアルサウンド(https://realsound.jp/2019/05/post-355959.html)
★西寺郷太GOTOWN Podcast Club: #26 V6とわたし~Guest:corin. 、鳴田麻未
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