2019年5月23日(木)より、写真家「ただ」による写真展「東京、クモの巣」が開催となります。会場は東京・馬喰横山のドラックアウトスタジオ。会期は5月23日(木)-6月2日(日)。
©︎TADA
ポートレートから物撮りまで、多岐に渡るジャンルで活躍をみせるたださん。人物や物に限らず、目の前の被写体に柔軟に対応し、それぞれ内に秘める輝きを独自の視点から写し撮る写真は、小誌『SWITCH』『Coyote』『MONKEY』の誌面をはじめ、雑誌や書籍、広告、CDジャケットなど媒体を選ぶことなく、唯一無二の彩りを加えてくれます。
2017年の「anonymous scene」以来、約2年ぶりとなる今回の個展では、東京近郊をテーマに撮り下ろした新作の写真作品を、ディスプレイを用いたインスタレーション形式で展示します。
2020年にはオリンピックの開催を控えた東京を舞台に、一人の写真家は何を見つめ、何を切り取るのか。常に新陳代謝を繰り返し、数えきれない人々が出会いと別れを繰り返す、特異な都市との付き合い方や見つめ方を、この展示では示唆してくれるかもしれません。
以下、今回の個展に宛てた、たださんからのメッセージです。
———————–
東京の野生についての話。
国税庁によって定められている建物の耐用年数表によると、
木造住宅は22年、鉄骨鉄筋コンクリート造住宅は47年で建物としての価値はなくなると決められています。
古くなった建物はまた新たな価値を生み出すために取り壊され、新しいビルやマンションへと生まれ変わります。
私の住む東東京エリアでも、次々とビルが建ち、タイルとガラスがはめ込まれ、
古い問屋街だった街が、ツルツルでピカピカとした街へと生まれ変わろうとしている真っ最中です。
長らく同じエリアに住み、街の移り変わりを見てきましたが、
街をツルツルでピカピカにしていくという行為は、東京(または東京を中心とした首都圏)の「癖(ヘキ)」なのではないかと思うようになりました。
古いものがいいとか街を守れなど言うつもりは一切ありませんし、誰か特定の人や団体をとがめる意図も皆無ですが、
いくつかの集団や意思決定プロセスを経て物事が進行すると、街はツルっとピカピカになるのが東京なのでは、と。
それは何か生き物が抗うことのできない本能のような、一個人の意図とは別の何か作用が働き、
まるでクモが巣をかけるように、ヒトがビルを建てているなんてそんな風にも見えるななどと、ぼんやり考えていました。
クモが巣を作るのは、あらかじめ備わる本能に従っての行動ですが、
私たち人間から見れば自然の一部として理解するクモの巣も、クモ当人にすれば生活の基盤となる建造物です。
自然物でありながら建造物でもあるというこの矛盾の構造は、
ともすれば私たちの生活するビルやマンションにも同じく当てはめられるように思えるのです。
知性的、理性的な行為としてのの建築と、
本能的で野性の発露としての巣。
激しく新陳代謝するこの街は、周到に計画された知性の結晶でありながら、
われわれの持つ野性に基づく本能的な行いの積み重ねでもあって、
それは本来相反するものであるはずなのに、その両方の性質を備えていように見えます。
その知性と野性が奇妙にもつれあった姿が、今の東京なのかもしれません。
ただ
———————–
写真展詳細
展示 | ただ 写真展「東京、クモの巣」 |
会期 | 2019年5月23日(木)-6月2日(日) 12時-20時 *オープニングレセプション:5月24日(金)18時〜20時 |
入場料 | 100円(運営に対するドネーションとして) |
会場 | dragged out studio 〒103-0011 東京都中央区日本橋大伝馬町15-3内田ビル1F |
企画 | 株式会社ゆかい |
アートディレクション | 菊地敦己 |
プロフィール
ただ 写真家。1981年神奈川県横須賀市生まれ。2007年写真家・池田晶紀率いる「ゆかい」に所属。主にポートレイト写真から物撮りまで、書籍、雑誌、広告、CDジャケットWebなどの分野で幅広く活躍している。また近年は、スチールだけではなく映像のカメラマンとしても活動を開始。