FROM EDITORS「旅をする木」
盛岡に行った夜のこと、地元の方の案内を受けて「東家」というそば屋で夕食を取った。東家は創業明治40年、わんこそばでよく知られた店だ。盛岡も緊急事態宣言が出ていて、20時までの営業。既に19時をまわっていたのでわんこそばは...
盛岡に行った夜のこと、地元の方の案内を受けて「東家」というそば屋で夕食を取った。東家は創業明治40年、わんこそばでよく知られた店だ。盛岡も緊急事態宣言が出ていて、20時までの営業。既に19時をまわっていたのでわんこそばは...
沖縄に住む写真家垂見健吾さんが最近断捨離をはじめた。東京のデパートで開かれる沖縄物産展でブースを借りて、自分のコレクションを販売するという。電話口で少し嬉しそうに話す垂見さんが少し心配になった。1948年生まれ、まだまだ...
休みを使って押入れの整理をした。1日1箱の整理、分厚いファイルを取り出すと、1枚のハガキがこぼれ落ちた。35年前に送られてきた小松崎茂の絵画のグループ展の案内状だった。小松崎さんは空想科学や冒険物を得意とした漫画家でもあ...
ある日、根岸にある香味屋という洋食屋を予約した。ここのハンバーグが絶品で、お腹を空かせて行こうと、根津で降りて谷中へ昼間から通称谷根千に足を運んだ。谷中を歩きながら古今亭志ん朝のことを考えた。スイッチで彼の特集をしたのが...
最愛の人を病気で亡くす、その方が両親のうちどちらかだとしたら、子どもとしてどのように最後の時間を過ごしていくのだろうか。父の好きな指揮者のレコードを一緒に聴くか、母が影響を受けた本の読み聞かせを行うか。僕自身は両親の死に...
明日誕生日を迎える友人にどんなふうに過ごすかと訪ねた。自分の好きな映画を家族で観ると彼女は答えた。働く彼女は母であり、子供は三人、みな成人したが、それぞれの誕生日には家族が集まって誕生日の人のリクエストの映画を観るという...
コロナ禍の東京に地方から友人が訪ねてきた。知り合いが近くで飲食店を開店したのでそのオープングを祝いにやってきたと言う。おめでとうとは口に出したが、パンデミックな中でたいへんな船出だと、心意気を友人とともに祝った。 翌日、...
5月の下旬、瀬戸内寂聴さんに久しぶりに電話をかけた。電話の時間は午前11時半、瀬戸内さんのマネージャーからあらかじめ指定された。 「久しぶりですね。元気でしたか? 待っていましたよ」瀬戸内さんの第一声は弾んだ様子だった。...