【CREATION SWITCH Vol.1 第7回】ファクトリーショップへようこそ!

ファクトリーショップ外観

久米繊維のTシャツがすべて試着・購入できるショップが久米繊維本社1階のファクトリーショップにあります。場所は東京スカイツリーのお膝元、下町・錦糸町駅から徒歩6分ほど。前述した通り、ファクトリーショップのスタッフは全員、久米繊維の社員が交代で日々対応をしているので、Tシャツ選びでわからないことがあれば久米繊維の社員の方々がなんでも相談にのってくれます(なんといいことでしょう!)。

「色丸首」、「01」、「楽」、「北斎プロジェクト」、「蔵印」etc……あなたのお気に入りの1枚がきっと見つかるはずです。

さらにファクトリーショップではTシャツ作りが体験できるワークショップも開催しています。連載最終回となるここでは、ファクトリーショップの魅力をお伝えするべく、主にワークショップのスタッフとしてお手伝いをしていただける甲斐さんと中島さんにお話を伺いました。

ーー甲斐さんは普段は営業職として、また中島さんは久米繊維のホームページ運営業務を主に行っていると伺いました。

甲斐「うちの社員インタビューを通してもお分かりになられたと思いますが、久米繊維の社員は様々な仕事をしています。私はメインには営業をしておりますが、配送業務や、時には会計・経理的な仕事もしていますし、サーバーの管理などもしています」

甲斐さん 着用Tシャツ 墨田区に本拠地を置くフットサルチーム「フウガドールすみだTシャツ」

——サーバーの管理まで……!

中島「(笑)。私もホームページの更新をしていますが、経理の仕事もしています。でも与えられた仕事の枠に囚われないほうが、やりたいことができると思っています」

——ワークショップはどのようなきっかけで始められたのでしょうか?

甲斐「最初はファクトリーショップの為ではなく、Tシャツを楽しもうという趣旨でインク会社さんと協力し、イベントなどから始まりました。Tシャツ作りを誰でも簡単に楽しめるものがいいと思い、ご用意したデザインの中から、好きなデザインと色を使ったシルクスクリーンプリントや生地を接着したりするTシャツ作りを体験できるようにしました」

中島「ワークショップを何度か重ねるうちに、私たちの予想以上に、『自分のTシャツを作る』ということをみんな楽しんでいることに気がつきました。そもそも日常生活でTシャツにプリントをするインクに触れるということはあまりないでしょうし、Tシャツを作る楽しさ、自由さをきっかけに、ファッションへの興味も生まれてくると思います」

甲斐「昔、小中学校と提携している教育機関の会社から講師として呼ばれたことがありました。デザイン会社を作りオリジナルTシャツを企画して、学校でファッションショーを開くまでを行いました。そこで子どもたちはTシャツデザインの話を熱心に始めるんです。どういうデザインにしようか、どこにプリントしようか、あの子センスあるね、とか。Tシャツ作りを通して毎日着るものが、実は作った人それぞれの思いがあるということを知ることができます。ものづくりの楽しさと難しさを体験できるのです」

——実は僕も一度ワークショップを体験したことがあります。

中島「ひょっとしてこのTシャツですか?」(iPadから写真を出す)。

——まさか覚えてくださっているなんて! 実際に体験してみてわかったのですが、デザインを考えるというのが本当に難しい。しかしシンプルなデザインでもシルクスクリーンで色がプリントされた瞬間に、頭の中だけだったものが”もの”として世界に誕生する感動を覚えました。このTシャツは色も落ちないし、型も崩れない。その上、できあがったものをパッケージングしてくださるので、自分の作ったものが商品になったかのような嬉しさも覚え、ファッションへの興味が湧く理由がわかった気がします。

パッケージングされた筆者のTシャツ

甲斐 & 中島「ありがとうございます」

——ワークショップにはどのような方がご参加されるのでしょうか?

中島「もちろん大人の方もいらっしゃいますが、お子様や学生の方が多いですね」

甲斐「小学校の夏休みの自由研究などでの利用が多いです。ワークショップを体験された子は『ちゃんとできました』って連絡をくれたりします」

中島「このあいだも小学校の子がワークショップを体験したもので賞が取れたと連絡してくださいました。その子は繊維についての研究をまとめていて、事前に質問内容をいくつかいただきました。ワークショップ中や、終わったあとに質問にお答えさせていただきました」

——すごい。

中島「最近では海外のお客様もいらっしゃいます。旅行会社さんとの協力で、体験ツアーとしてご紹介いただいています。」

——海外の方が久米繊維で国産Tシャツ作りを体験できることは、そのクオリティを直に堪能することができるので、素晴らしいことだと思います。

甲斐「私たちのモットーに『日本でこそ創りえるTシャツを世界へ。未来の子どもたちへ』という言葉があります。ファクトリーショップがあることで、まさにそのモットーの実現に一歩一歩近づいていけるような、素敵な出会いがあるので、ワークショップは私たちにとってとても大切な意味があります」

——ファクトリーショップの中についてお話を伺いたいと思います。まず入り口に入ると10枚のTシャツが縦にずらっとならんだ「10 Pieces exhibition」が目に入ります。これはどういうTシャツなのですか?

甲斐「ここはお客様に今一番知っていただきたいものを10枚のTシャツで展示する企画です。今回は竹内が関わっているすみだストリートジャズフェスティバルのTシャツを展示しておりますが、その前には墨田区を拠点としているフットサルチーム「フウガドールすみだ」の開幕にあわせて歴代のTシャツを飾っていました。それ以外にも私たちの新作商品を発表する場所でもありますし、1点限りの限定Tシャツも販売していたこともございます」

——次に目に入るのはこのミシンなのですが、これはどういったものでしょうか?

ファクトリーショップにあるミシン

中島「この足踏みのミシンは昔、創業当時に使用していたモデルに近しいものを昔のミシンをリストアしている方より譲り受けたもので今でも動いて使うことができるんですよ。ファクトリーショップの象徴として置いていますが、久米繊維のことを知らなくても、お店の前を通りかかった人がこのミシンを目にして、吸い込まれるように店内へ来ていただくことも多いです」

——まさに魔法のミシン。この空間の暖かさとマッチしています。

甲斐「ファクトリーショップ内では、海外から見た日本というテーマ「ZENスタイル」を取り入れ空間演出をしています」

——このTシャツの多さは思わず写真を撮りたくなりますね。

ファクトリーショップに並ぶ「01 Tシャツ」

 

中島「ご来店いただくお客様の中には『01』Tシャツのカラーバリエーションを写真に撮って行かれる方も多いです。『SNSを見てきました』と、わざわざ北海道から来てくださったお客様もいらっしゃいました。インターネットを通して久米繊維のTシャツが広がっていくことは、とても素敵なことで、ありがたい事だと思います。私たちのTシャツを気に入っていただければ、周りの友達や自分の子どもに久米繊維のTシャツを話していただけるかもしれない。そうやって100年後へ繋がるTシャツ。ファクトリーショップでの体験がそのきっかけになればうれしいです」

エピローグ
久米繊維のみなさんは”繋がり”という言葉を非常に大切にしています。ものづくりの川の繋がり。日本の芸術、伝統文化を守り繋ぐ。人と人との繋がり。そして未来の子どもたちへ繋げる。先代から受け継がれるものづくりと商売に対する真摯な心。久米繊維を生成するこのDNAは環境の変化に適応しながら進化を続けます。変わらない一本の強い糸のようなこの指針は、実は糸と糸とが混ざり合い、目に見えないレベルで細く細く編み込まれた強靭な糸同士の結束です。その結束があってこそ、久米繊維の強くしなやかなTシャツものづくりは続いています。時代の流れが映画のような悲劇を招いても、ものづくりの現場は映画のように起承転結で終わらない。何よりも続けることが大切と久米社長が繰り返し語ります。いま、一人の映画少年が描いた夢は100年後を見据えたものづくりの誇りとなり、久米繊維の物語はこれからも続きます。

<目次>
第1回 最初で最後の国産Tシャツ、はじまりの下町へ(10月22日公開)

第2回 究極のTシャツ――色丸首を語る(前編)(10月22日公開)

第3回 究極のTシャツ――色丸首を語る(後編)(10月23日公開)

第4回 表現者を”着る”ということ――「北斎プロジェクト」(10月24日公開)

第5回 Tシャツを着て飲む酒は「ヤレタノシ ヤレウマシ」 ――日本酒Tシャツ『蔵印』(10月25日公開)

第6回 久米繊維がTシャツを作り続ける理由(10月26日公開)

第7回 ファクトリーショップへようこそ!(10月29日公開)